研究課題/領域番号 |
15J00190
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
熊谷 将也 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | Aluminium / Pseudogap / Unstable phase / Thermoelectric / Novel material / Thermal conductivity / Semiconductor / Seebeck coefficient |
研究実績の概要 |
近年,既存高性能熱電材料は毒性を含むものが多く,商業利用など応用を考慮した場合に大きな障壁となるため,無毒で高い変換効率を有する材料(現在ではSi系熱電材料が主流)の研究が注目されている。その一方で,Si以外の無害な材料系,特にAl系熱電材料はほとんど存在しない。そこで本研究では,新たなAl系熱電材料を提案し,それら材料の作製手法の確立および各種熱電特性の評価を行うことを目的としている。平成27年度の研究実施計画は、新規準安定材料Al6Ge5の各種熱電特性の測定、および新規半導体材料FeAl2の作製であった。Al6Ge5については当初の予定通りに進み、従来の高性能熱電材料と同程度に著しく低い熱伝導率を示すことが確認できた。これまで世界的に安定な無機材料の物性値は数多く報告されているが、準安定相の物性値はあまり報告されていない。そのため、準安定材料の物性測定に成功した自体に意義があり、さらに高性能熱電材料としての可能性を示すことができたことも大変意義がある。これらの結果は、国内外の学会での発表および論文での報告も行った。FeAl2については、当初計画していたいくつかの手法(液体急冷法やスパッタリング法)を用いて作製を試みたが、いずれの手法も作製困難であり、現在も研究を継続中である。一方で、これらの研究を続けている中で、Al3Vという新規擬ギャップ系材料を発見し、そちらについても並行して実験を行った。当初計画はしていなかったが、新規Al系熱電材料の創製という研究課題の範囲内であり、大変興味深い材料であったため研究を行った。その結果、これまでに報告されている高性能なAl系熱電材料と同程度の変換効率を達成した。こちらの結果についても、国内外の学会での発表および論文での報告も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画としては、新規準安定材料Al6Ge5の各種熱電特性の測定、および新規半導体材料FeAl2の作製であった。Al6Ge5の各種熱電特性の測定ついては当初の予定通りに進み、走査型二次元ゼーベック係数評価装置を用いたゼーベック係数および熱伝導率の測定に成功した。また、ゼーベック係数については別の装置(ZEM3)でも測定し、同じ値であることも確認できた。電気的特性については、予想したよりも良い結果ではなかったが、熱伝導率は予想したよりも低い値となり、良い結果を得ることができた。またこれらの結果について、国内外の学会での発表および論文での報告も行った。一方、FeAl2の作製については、当初予定していた液体急冷法およびスパッタリング法を用いた作製を試みたが、どちらの手法においても作製困難であった。そのため、現在新たな手法を探索している。探索している間に、Al3Vという新規擬ギャップ系材料を発見したため、そちらについても並行して実験を行った。当初計画はしていなかったが、新規Al系熱電材料の創製という研究課題の範囲内であり、大変興味深い材料であったため研究を行った。その結果、これまでに報告されている高性能なAl系熱電材料と同程度の変換効率を達成した。そのためこちらの結果についても、国内外の学会での発表および論文での報告も行った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き今後もFeAl2の作製手法の探索を続ける予定としている。作製に成功した際は、各種熱電特性を測定し、学会や論文等で発表する予定である。その一方で、当初の計画ではないが新規擬ギャップ系材料Al5Co2を新たに発見したため、そちらについても研究を進める予定としている。こちらの材料は、同じ擬ギャップ材料であるAl3Vよりも、少し幅の広い擬ギャップであることから、より高いゼーベック係数が期待でき、高い変換効率が得られる可能性がある。こちらの材料も、過去に物性等の報告例がなく、作製に成功させて物性を測定することは大きな研究意義があると考えている。また、昨年度から熱電変換材料の過去の物性値をデータベース化し、新規材料探索を効率化させる研究も並行して少しずつ進めており、自身の研究課題のさらなる発展に繋がるだけでなく、無機材料分野の発展に繋がると考えている。こちらの研究に関しても、本来の計画と並行して行い、論文投稿および学会発表などを行うことを計画している。
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