超幾何級数(合流型超幾何級数も含む)の隣接関係式について深く理解するため、またそれが様々なところで応用できる可能性を探るために、昨年度に引き続き以下の研究を行った。
1. 一般超幾何級数 3F2(1) の値は応用上重要であるが、閉形式で表せないため、値を数値計算する必要性が出てくる。そこで 3F2(1) の連分数表示に関する研究を昨年に引き続き岩崎教授と共同で行った。研究の結果、 特別なパラメータの下であるが、3F2(1) に線型収束するよう連分数表示が得られ、さらにその連分数表示を有限項で打ち切ったときの値と真の値との誤差評価まで明らかにすることが出来た。この連分数表示によって、(特別な) 3F2(1) の値を高速に数値計算出来るようになった。 2. 3F2(1) の値は「閉形式」では表せないが、もう少し複雑な関数を使って表せるかもしれない。そこで、3F2(1) の値について考察し、この値は「ガンマ乗積」では表せ得ないことを示した。ここで、「ガンマ乗積」とは指数関数とガンマ関数との積のことである。「ガンマ乗積」と「閉形式」との関係は明らかでないが、少なくとも「閉形式」では表せない「ガンマ乗積」が多く存在することが分かっている。これらの結果から、3F2(1) の値はとても複雑な関数を用いることでしか表せ得ないことが分かった。以上の結果は岩崎教授との共同研究である。 3. 超幾何級数の特殊値の研究は現在に至るまで盛んに行われている。報告者は、以前導入した隣接関係式の方法を使うことで、まず 一個以上の自由変数を持つ Appell の超幾何級数の特殊値を幾つか見つけた。そしてそれらの特殊値を更に特殊化することで、代数的値を持つガウスの超幾何級数を幾つか見つけた。これらは Siegel の問いに対する新たな具体例となっている。
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