研究課題
4月より青山学院大学にて研究を開始した。先スペイン期と植民地時代の比較研究では、16世紀に関する先住民の王族や中間貴族たちに関する文献を収集した。本年度はマヤ地域のみならず、メキシコ中央高原やオアハカ盆地などの文献を読解し、さらにスペインや日本などの事例なども参照することによって、初期国家における中間貴族の特徴や物質文化の理解に努めた。メキシコでの現地調査では、前年度にマヤ地域にあるエル・パルマール遺跡の発掘調査から出土した遺物の整理作業と肉眼分析を報告書にまとめ、発掘申請書とともにメキシコ政府へ提出した。とりわけ、北周縁部にある建造物GZ6の層位関係を復元した。これらの成果が認められて、メキシコ政府より発掘許可が下り、学術振興会に提出した研究計画書通り2016年1月25日~4月6日にかけて、発掘調査を実施した。本年度における調査目的は、碑文階段の解読成果によって明らかになったラカム(旗手)の称号を持つ役人の広場における諸活動を精査することであった。その過程で、北周縁部の広場を囲む二基の建造物を全面発掘・修復した。発掘によって広場を囲む建造物の全容がわかり、部屋の内部から出土した6基の墓は、今後の形質人類学的分析により、古代マヤ文明におけるラカム役人の身体的特徴の復元を世界ではじめて可能にした。出版においては、人類史研究への貢献を視野に入れつつ、本年度はイデオロギーに着目した。先行研究を批判的にまとめてその問題点を提示し、独自に発展させたイデオロギー論を視座に古代マヤ文明の事例を検証した成果を論文として考古学研究会に投稿し、査読審査後、2016年3月に出版された。同様に、米国における中南米研究に関して最も権威ある論文雑誌のLatin American Antiquityにおいて査読論文を出版した。また、国内外の学会にて研究成果の一部を英語と日本語で発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度から、国内外において権威のある論文雑誌で、日本語と英語によって査読論文を出版できたのは大きな成果と考える。また、発掘において6基の墓などを中心に予想以上にデータを収集できたために、本年度においては、当初の計画以上に進展していると判断する。
来年度は、発掘調査を継続しつつ、比較研究のために植民地時代の一次史料をスペインのインディアス文書館などで収集する予定である。エル・パルマール遺跡の北周縁部における発掘調査では、広場の南地区と広場周辺の建造物を全面発掘する予定である。広場の内側だけでなく、外側を発掘することによって、ラカム役人たちの公的活動と私的活動を比較し、それらの実践活動が都市全体を変化させた過程を追う。同時に昨年度、収集した遺物の肉眼分析と理化学分析を同時に実施し、ラカム役人たちの物質文化を明らかにする。また、メキシコ政府と研究代表者の所属する青山学院大学との協定を結ぶために、現在スペイン語、日本語にて協定書を作成中である。協定内容について、同機関とも大幅な合意に達しているため、早ければ来年度の5月には、協定が締結される予定である。これらの研究成果を、雑誌論文や国際会議で発表しつつ、単著として出版するための準備を開始し、出版社の担当者と打ち合わせをする予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
考古学研究
巻: 62巻4号 ページ: 71-90
Maya Archaeology, edited by Charles Golden, Stephen D. Houston, and Joel Skidmore, Vol. 3, Precolumbia Mesomeb Press
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Latin American Antiquity
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10.7183/1045-6635.26.2.200
筑波大学ニュースレター:現代文明の起草としての古代西アジア文明
巻: 6 ページ: 15-16