研究課題/領域番号 |
15J00281
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
神藤 隆志 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 高齢者 / 体力 / 身体機能 / 身体活動量 / スクエアステップ |
研究実績の概要 |
高齢者を対象とした運動教室の体力向上への効果は背景因子による影響を受けることが報告されているが,背景因子がどのように教室中の活動に影響を与え,体力変化に違いが表れるのかについてはほとんど検討されてこなかった。また,背景因子を考慮して運動教室の効果を最適化する取り組みをおこなうことで,介護予防現場における有効な取り組みを提案することができる。本研究の目的は,高齢者の運動教室参加による体力への効果を規定する因子を詳細に明らかにし,その規定因子を考慮した運動教室の開催方法を提案することである。 今年度はまず,これまでの運動教室にてデータ収集をおこなってきた介護予防運動「スクエアステップ」の習熟度と体力変化の関連性について検討した。その結果,スクエアステップのステップパターンは,運動教室前の認知機能が高い者ほどその達成度が高いことが明らかとなった。一方,体力変化に関しては,個人に合った難度のステップパターンに取り組むことで体力への効果が得られる運動であることが明らかとなった。 続いて,運動教室期間中の身体活動量の変化が運動教室の体力への効果に与える影響を検討した。運動教室期間中に日常生活の身体活動量が減少した者と,維持した者の体力変化を比較したところ,減少した者においては歩行能力への効果が阻害されることが明らかとなった。 運動教室期間中の日常生活の身体活動を考慮した運動プログラムについても検討を行った。身体活動を促進する簡便なツールである歩数計を用い,運動教室期間中の日常生活において歩数計を着用する群と着用しない群の体力変化を比較したところ,着用した群は歩行能力や起居移動能力への効果が得られやすいことが明らかとなった。以上の通り,地域在住高齢者を対象とした運動教室の体力への効果を高めるための方策について,いくつかの知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究計画内容に関連する研究成果について,国際学会で発表を1回行い,国際学術雑誌へ2本,国内学術雑誌へ1本の原著論文を掲載あるいは掲載予定としており,おおむね予定通りの成果発表ができたと考えられる。 本研究は,運動教室の体力への効果を規定する因子を明らかにした上で,体力への効果を大きくするための方策を提案するものである。今年度はまず,運動教室内の活動の様子に着目した検討として,介護予防運動「スクエアステップ」の習熟度と体力変化の関連性について国内学術雑誌にて成果を公表した。さらに,運動教室外の日常生活の身体活動量の変化に着目した検討も行い,この成果は国際学術雑誌にて公表した。この検討によって運動教室実施期間中の日常生活の身体活動量の重要性を明らかにした上で,運動教室と身体活動促進技法を組み合わせることで体力への効果を大きくするという内容にも取り組み,この成果も国際学術雑誌にて公表した。 現在まで研究計画に沿って検討を進めており,高齢者の体力向上に有効な運動教室に関する知見をいくつか見出すことができたことから,おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
まず,これまでに実施した対象者の特徴に応じた個別の目標設定,フィードバックを行う運動教室の効果を検討した内容について,国際学会American College of Sports Medicine 63rd Annual Meeting 2016(Boston, USA)にて発表を行い,学術雑誌にて成果を公表する予定である。この研究では,比較的体力水準が高い高齢者を対象として検討を行ったため,今後は,体力水準が低い高齢者を対象とした運動教室の開催を計画している。また,運動教室の体力への効果に影響を与える背景因子の一つである認知機能に焦点を当て,いかに効果の阻害を防ぐかという方法についても検討していく。 以上の通り,今後も当初の研究計画をもとに研究を進めていく予定である。
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