高齢期にあっても,なるべく若年のうちに身体機能を高い水準に保つことは将来的な身体機能障害を予防することに役立つ。現在,身体機能の維持・向上を目的とした介護予防運動教室が全国でおこなわれているが,高齢者人口のさらなる増加や将来的な経済的資源の枯渇を見据えて,費用対効果の高い運動教室を開催していく必要がある。高齢者を対象とした運動教室の体力への効果は背景因子による影響を受けることが報告されているが,背景因子がどのように教室中の活動に影響を与え,体力変化に違いが表れるのかについてはほとんど検討されてこなかった。本研究の目的は,高齢者の運動教室参加による体力への効果を規定する因子を詳細に明らかにし,その規定因子を考慮した運動教室の開催方法を提案することである。 これまでの研究から,運動教室期間中の身体活動量減少は体力への効果を阻害する可能性を見出した。そのため,今年度は昨年度に引き続き,運動教室期間中の身体活動を考慮したプログラムについて検討を行った。 運動教室期間中に歩数計を活用した目標設定を行い,身体活動量の減少を防ぐことで体力への効果が大きくなるか否かを検討した。その結果,1日当たり1千歩の増加を目指した目標設定を行うことで,身体活動量減少を防ぐことができた。しかし,身体活動促進による下肢機能の効果の増大は認められなかった。このことから,運動教室期間中の身体活動量向上による体力への影響には天井効果が存在する可能性が示唆された。 初年度の研究と併せて,地域在住高齢者を対象とした運動教室の体力への効果を高めるための方策について,いくつかの知見を得ることができた。
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