マイクロミキサーの設計論としては、他の研究グループからも混合評価及び設計法が提案されているが、同一物性・等量混合を前提に構築されており、開発されてきたマイクロミキサーも、同一物性・等量混合で最適化された対称形のものが大半を占める。そこで多角的に混合評価を行いつつ、より汎用的な設計法の提案を目指した。マイクロジェットミキサーに特に着目した。マイクロジェットミキサーは、市販のティーで安価に作成することができる。入口の選定が反応の選択性に大きく影響することを明らかにし、その原因を数値計算を活用して議論した。その他混合時間の測定等に基づき、設計チャートを作成することに成功した。細管から粘度の低い流体を供給することが重要であるという結論は、一般的な常識を覆すものであり、非常に意義深いものだと考えている。これらの結果は、近年創刊された英国王立化学会の学術誌に採択され、表紙で特集された。 ポリマーの合成においては、前年度まで得られた結果を用いて分子量分布の制御された製品を合成することに成功し、また粘度の測定等を行うことにより安定してマイクロリアクターで高分子合成を行うために必要な事項を整理した。これらの結果は、産業界の研究者が編集委員をすべて務める、応用研究のための学術誌に採択された。 貴金属合金ナノ粒子の合成においては、ポリオール法に着目し、マイクロリアクターならではの迅速な昇温・冷却により数秒単位で200℃での反応時間を制御することにより、前駆体の還元についての反応速度解析を行った。これにより、合金生成のための必要条件並びに詳細な機構が明らかになった。得られた知見に基づき、触媒として高活性のパラジウム・ルテニウム合金ナノ粒子を効率よく合成するためのマイクロリアクター並びにその反応条件を設計することに成功した。これらの結果は現在学術誌に投稿準備中である。
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