研究実績の概要 |
血管炎症候群患者末梢血単核球からセンダイウイルスベクターを用いて、血管炎症候群患者由来のiPS細胞の作製を行った。具体的には、大動脈炎症候群患者2名の末梢血単核球から各3ラインずつ、計6ラインのiPS細胞を樹立した。多分化能の評価として、免疫染色、mRNA発現解析、核型検査、NOD-SCIDマウスを用いた奇形腫形成能を確認した。これらのことから、大動脈炎症候群患者由来のiPS細胞の樹立に成功した。 次に作製したiPS細胞から血管内皮細胞の分化誘導を行った。分化誘導プロトコールはOrlova VV, et al. Nat Protoc. 2014を用いて行った。この分化誘導法は健常人由来iPS細胞では、実際に血管内皮細胞を分化誘導可能であることが確認できていたが、大動脈炎症候群患者由来のiPS細胞では血管内皮細胞を効率よく分化誘導することができなかった。 そこで、次にOrlova VV, et al. Nat Protoc. 2014の血管内皮分化誘導プロトコールを添加するサイトカイン・低分子化合物の量、添加時期などを一部変更し、分化誘導効率の改善を試みたが、めざましい改善は認められなかった。また、その他の既報告の論文などを各種調査し、古典的なOP-9を用いた分化誘導法(Sone, M. et al. Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 2007)や胚様体を用いた誘導方法(Nakahara M, et al. Cloning and Stem Cells 2009)などの誘導法を適宜応用しながら血管内皮細胞の誘導を試みた。しかし、血管内皮細胞は、少量であれば誘導されるが、機能解析実験が可能なほどの高効率で、血管内皮細胞を誘導することは困難であった。 現在独自の方法での血管内皮細胞の誘導プロトコールを開発している。
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