研究課題/領域番号 |
15J00329
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
愛新覚羅 維 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 角膜内皮分化誘導 |
研究実績の概要 |
ヒト角膜内皮細胞(HCEC)はポンプ機能とバリア機能によって角膜の透明性を保持している。HCECは胎生期の神経堤幹細胞(NCSC)に由来し、生体内では増殖できない特徴をもっているため、様々な要因によって損傷を受けると不可逆的に減少してしまい、失明にも至る水疱性角膜症という病態に陥る。水疱性角膜症に対して従来献眼による角膜移植が行われてきたが、深刻なドナー不足と術後の拒絶反応が大きな問題となっている。本研究の目的は、これまでの角膜再生医療の欠点を克服し、最新のiPS作製法を用いて、患者自身の末梢血単核球から樹立したiPS細胞をHCECに分化誘導し、移植可能な細胞シートを作製して移植に供するという、ドナー不足と拒絶反応を同時に解決しうる画期的な角膜再生治療法を開発することである。 これまでに、末梢血単核球からのiPS細胞の樹立および多能性確認、iPS細胞からHCECの前駆細胞であるNCSCへの分化誘導および確認、誘導されたNCSCの純化、NCSCからHCEC様細胞への誘導を成功させた。 H27度ではATRA、Asc-2P、TGF- β2、bFGF、SB431542、Y27632等HCECの分化・増殖に関わるサイトカインや化合物を添加した培地でHCECの前駆細胞であるNCSCを培養することにより、NCSCからHCEC様細胞への分化誘導条件を成功させた。誘導されたHCEC様細胞の角膜内皮マーカーの発現をrealtime PCRで確認したところ、一部の細胞において、Col8A2、Col4A2、SLC4A4、CDH2の遺伝子発現を認めた。また誘導されたHCEC様細胞について、抗ZO-1抗体、抗Na+/K+ ATPase抗体、抗SLC4A4抗体、抗Col8A2抗体を用いる免疫染色を行ったところ、一部の細胞において、陽性発現を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予定通りに進行していると考えられる。今後はこれまでの結果の再確認と方針検討を積み重ね、さらなる進展を図る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
誘導HCECシートを構築する:誘導HCECの懸濁液を高分子膜(アテロコラーゲンシート)上で培養し、誘導HCECシートを作製する。 誘導HCECシートのポンプ機能を解析する: Ussing chamberを用いて、コラーゲンシート、培養角膜内皮シート、および誘導HECEシートのNa/K ATPaseポンプ機能の解析を行い、比較検証する。 動物モデルを用い、誘導HCECシートのin vivoにおける生理的機能を検証する: ウサギの片眼デスメ膜を破壊・除去し、内皮 障害モデルを作製する。ウサギをHCECグループ(誘導HECEシート移植)と対照グループ(コラ ーゲンシート移植)に分け、各グループは4羽のウサギ(8眼)を含む。術後の両眼間およびグループ間の臨床観察および組織学の比較を行う。
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