現生鳥類の翼の形態データを各目レベルを網羅するよう収集し,それらと足跡の形態データとの間に統計解析を行い関係を見出した.その関係性を白亜紀鳥足跡化石へ演繹し,翼の形態と大きさを推定した.昨年度に確立した鳥足跡化石からその形成者の体重推定と生息環境の推定手法と,鳥足跡化石の大きさと形態から,鳥体重,翼形態,生息環境を定量的に推定する事が可能となり,これらの推定値を現生鳥類のそれらと比較する事で,大まかにどの現生種に似ている可能性が高いか特定する事が出来た.さらに,鳥足跡形態と翼形態との関係についてさらに解析を加え,両者の関係はそれぞれが反映している歩行と飛翔という行動様式が生息環境を介して関係したものである事が明らかになった.この成果を,国内学会(日本古生物学会,日本鳥学会)で発表し,内容をまとめて英国古生物学会誌に発表した. 鳥類の歩行進化の詳細な解明を目指すため,基礎研究として大型水鳥のコウノトリ足跡を収集し統計解析を行った.雄雌一羽ずつのコウノトリが陶土上を歩行するのを待ち足跡を収集した.ここで,コウノトリ足跡には他の大型水鳥とは異なり中足骨跡が残りにくい事がわかった.個々の足跡を形態解析した結果,コウノトリは歩行時に足の外側(lateral side)に力をのせている事がわかり,これは他の鳥の傾向と整合的である.さらに,足跡の縦横比と歩行スピードとの関係から歩行スピードが速いと指が内転し,一方で,遅いと指が外転している事がわかった,これはコウノトリ目が第一指と足裏が強固な筋肉構造を持っている事と整合的である.この内容について,地球惑星連合大会で発表し,現在,国際誌へ投稿査読中である. 鳥の模様について,人間の視覚が直観的に模様を把握する際に重要な要因である”対称性”に客観的な立場から着目し,模様と生息戦略と関係を明らかにした.この内容について,論文公表済みである.
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