研究実績の概要 |
尿毒素であるインドキシル硫酸は慢性腎臓病患者の腎機能を増悪させる因子である。我々はインドキシル硫酸による腎尿細管の炎症、線維化、老化の促進、活性酸素の増加、p53-TGF-β1-Smad3 pathway, NF-κB, OAT3/AhR/Stat3 pathwayの活性化を示してた。インドキシル硫酸が動脈硬化をいかに進行させるのかを検討するために、新しい動脈硬化の進展因子として注目されるNotchシグナルの作用点と活性、さらには病理的役割について検討すること。対照ラット、ダール高血圧ラット、インドキシル硫酸投与ダール高血圧ラット(尿毒症モデル)の大動脈を摘出し、Notchシグナル関連分子について免疫組織染色を行い、発現の変化を比較検討した。インドキシル硫酸はNotch1シグナルを血管平滑筋において活性化する一方、石灰化病変においては発現が減少していた。インドキシル硫酸は血管平滑筋のNotch1シグナルを変化させることが考えられた。そこでラット大動脈平滑筋の初代培養に、インドキシル硫酸を作用させるとNotch1活性の変化を検討した。Notch1受容体のmRNAと活性化Notch1の発現は、時間にして72時間、濃度にして1000 μMをピークに減少した。これは長期間、強いインドキシル硫酸の刺激がNotch1シグナルの活性を減弱することを示している。我々はNotch1の活性化の低下が平滑筋のアポトーシスの惹起と相関があることをすでに示している(Takeshita K et al Circ Res 2007)。インドキシル硫酸は大動脈平滑筋のNotch1活性を変化させる。短期間、低濃度の刺激は活性化するが、高濃度・長時間の刺激はNotch1活性を減退させる。その結果平滑筋にアポトーシスを誘導し、石灰化病変の形成に寄与する。
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