本年度は、マウスの後肢懸垂モデルを用い、除負荷によるサテライト細胞の機能変化を、サテライト細胞の運命決定を制御するNotchシグナルに着目して検討した。 C57BL6/jマウスを尾部から吊るし、後肢を接地できないようにして1週間飼育した。その結果、マウスの下肢筋重量が有意に減少し、後肢懸垂によって筋萎縮が誘導されたことを確認した。後肢懸垂(HS)群と通常飼育(Cont)群のマウスの長趾伸筋から単一筋筋線維を単離し、サテライト細胞のマーカー遺伝子であるPax7の抗体を用いて免疫染色することで筋線維あたりのサテライト細胞数を定量した。その結果、HS群はCont群と比較して、サテライト細胞数が減少していることが明らかとなった。続いて、HS群とCont群の双方の後肢筋を全て摘出し、フローサイトメーターによってサテライト細胞を分取した。その後、RNAを抽出し、定量PCRによってNotchシグナル関連遺伝子の発現量を定量したところ、HS群から採取したサテライト細胞はCont群と比較して低値を示した。これらのことから、除負荷によるサテライト細胞の減少はNotchシグナルの不活性化に起因する可能性が示唆された。さらに両群から単離した単一筋線維を培養し、Pax7とサテライト細胞活性化のマーカーであるMyoDの抗体を用いて免疫染色することでサテライト細胞の活性化および増殖能力を評価したところ、除負荷を経験したサテライト細胞は活性化が遅延し、増殖能力が低下することが示唆された。 以上の結果から、除負荷によってサテライト細胞の性質が変化し、活性化や増殖といった機能が低下することが明らかとなった。本研究成果は、これまでのサテライト細胞研究では明らかになっていない新規の知見であり、本研究は分野の発展に寄与する有意義な研究である。
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