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2015 年度 実績報告書

ヒト脳における白質視覚経路と視覚情報処理の包括的解明

研究課題

研究課題/領域番号 15J00412
研究機関国立研究開発法人情報通信研究機構

研究代表者

竹村 浩昌  国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 特別研究員(SPD)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2018-03-31
キーワード白質 / 拡散強調MRI / トラクトグラフィー / 視覚 / アンサンブル法 / 比較解剖学 / 両眼立体視 / Quantitative MRI
研究実績の概要

平成27年度は、「アンサンブルトラクトグラフィー」法と呼ばれる拡散強調MRIデータの解析方法の開発を行い、実測データを基にした手法の正確性および妥当性の検証を行った。アンサンブルトラクトグラフィー法とは、これまでに提案されてきた複数の解析方法の長所を組み合わせることで、これまでも高い精度の解析結果を得ることを目標に開発された手法である。今年度の研究では、この手法が従来法と比べて高い精度で拡散強調MRIデータから白質線維束を同定できること、解析者による恣意的なパラメータ選択が出力に及ぼす影響を低減できることを明らかにした。この結果は、原著論文としてPLoS Computational Biology誌より出版することができた。

加えて、アンサンブルトラクトグラフィー法を用いてヒト脳とサル脳の白質視覚経路を比較する研究を実施した。ヒトを対象とした研究では、近年Vertical Occipital Fasciculus (VOF)と呼ばれる白質線維束が空間情報と物体認識情報の統合に関わるとされ注目されている。この研究では、ヒトとサルの結果を比較することで、サル脳においてヒトのVOFと相同する白質繊維束があることを示した。この結果は国際会議Society for Neuroscienceにおいて発表した。

さらに、ヒトの白質視覚経路と視覚認知機能の関連を検証する実験を実施し、視覚に関わる白質経路の組織特性がヒトにおける視覚認知機能の個人差と関連することを示唆する結果を得た。ヒトを対象としたQuantitative MRII計測に関する和文総説を執筆し、「視覚の科学」誌より出版した。また今年度得られた成果に関する招待講演を生理学研究所・高知工科大学・奈良先端科学技術大学院大学において行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度はアンサンブルトラクトグラフィー法と呼ばれヒト脳白質線維束の同定を行う解析手法の開発を行い、その成果をPLoS Computational Biology誌に原著論文として出版することができた。これに加え、ヒト脳とサル脳において視覚情報処理に関わる白質線維束を比較するプロジェクトを進め、国際会議での発表を行った。さらに大阪大学の研究グループと共同で、当初の計画には含まれていなかった拡散強調MRIデータと心理物理実験を連携させるプロジェクトを行うことができた。その結果、白質の線維束の組織特性がヒトの視覚認知機能の個人差と関連することを示唆する興味深い知見を得た。また次年度に向けて、Quantitative MRI法および脳磁図(MEG)法の予備実験を着実に行っており、Quantitative MRI実験では再現性の高いデータを得ている。そのため、来年度はこれらの手法を加えることによって研究計画がさらに進展することが期待できる。

今後の研究の推進方策

現在用いている拡散強調MRIで得られる指標は、複数の生理学的要因(髄鞘化、軸索の密度、グリア細胞の密度、線維交差など)によって変化することが知られている。そのため拡散強調MRIのデータだけでは、得られた結果と生理学的要因を一意に関連づけて解釈することができない。近年研究が進んでいるQuantitative MRI(以下QMRI)と呼ばれる計測法では、白質の髄鞘化とより対応した定量値を得ることが可能である。今年度の予備実験の結果、QMRI法による計測を受け入れ機関のMRI施設で実施する目処が経ったため、次年度はQMRIを用いた新たな展開が期待できる。また拡散強調MRIからは白質線維束およびその組織特性を同定することが可能であるが、将来的にはこうした線維束を通じて情報がどのように伝播するかを明らかにする必要がある。そこで次年度では白質における情報伝達の時間的特性や方向性を理解するため、受け入れ機関の保有する脳磁図装置を用いた高時間解像度の脳活動計測を行い、拡散強調MRIやQMRIで得られた結果との関連を検証することを計画している。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] Stanford University/Indiana University/National Institute of Health(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Stanford University/Indiana University/National Institute of Health
    • 他の機関数
      1
  • [国際共同研究] Max Planck Institute(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Max Planck Institute
  • [国際共同研究] University of Antwerp(ベルギー)

    • 国名
      ベルギー
    • 外国機関名
      University of Antwerp
  • [国際共同研究] CONICET(アルゼンチン)

    • 国名
      アルゼンチン
    • 外国機関名
      CONICET
  • [雑誌論文] Ensemble Tractography.2016

    • 著者名/発表者名
      Takemura, H., Caiafa, C.F., Wandell, B.A. & Pestilli, F.
    • 雑誌名

      PLoS Computational Biology

      巻: 12 ページ: e1004692

    • DOI

      10.1371/journal.pcbi.1004692

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Quantitative MRIによる視覚野研究.2015

    • 著者名/発表者名
      竹村浩昌.
    • 雑誌名

      視覚の科学

      巻: 36 ページ: 69-75

    • DOI

      10.11432/jpnjvissci.36.69

  • [雑誌論文] 視覚生理学.2015

    • 著者名/発表者名
      竹村浩昌.
    • 雑誌名

      照明学会誌

      巻: 99 ページ: 432-433

  • [学会発表] Occipital vertical fiber pathways in human and macaque: diffusion MRI study.2016

    • 著者名/発表者名
      Takemura, H.
    • 学会等名
      高知工科大BrainCom講演会
    • 発表場所
      高知工科大学(高知県香美市)
    • 年月日
      2016-01-25
    • 招待講演
  • [学会発表] 拡散強調MRIを用いた脳情報伝達機構の研究.2015

    • 著者名/発表者名
      竹村浩昌.
    • 学会等名
      異分野融合ワークショップ「生体における情報伝達制御システムの破綻と疾患」
    • 発表場所
      奈良先端科学技術大学院大学(奈良県生駒市)
    • 年月日
      2015-12-11
    • 招待講演
  • [学会発表] Occipital vertical fiber system in human and macaque.2015

    • 著者名/発表者名
      Takemura, H., Pestilli, F., Weiner, K.S., Keliris, G.A., Landi, S., Sliwa, S., Ye, F.Q., Barnett, M., Leopold, D.A., Freiwald, W., Logothetis, N.K. & Wandell, B.A.
    • 学会等名
      Society for Neuroscience
    • 発表場所
      シカゴ(アメリカ合衆国)
    • 年月日
      2015-10-21
    • 国際学会
  • [学会発表] ヒト脳における白質を介した脳情報通信経路.2015

    • 著者名/発表者名
      竹村浩昌.
    • 学会等名
      平成27年度日本学術振興会育志賞研究発表会
    • 発表場所
      京都大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2015-09-01
  • [学会発表] 網膜色素変性による視索、視放線の拡散強調MRI変化.2015

    • 著者名/発表者名
      小川俊平, 竹村浩昌, 堀口浩史, 寺尾将彦, 土師知己, 林孝彰, 宮崎彰, 吉嶺松洋, 常岡寛, 増田洋一郎.
    • 学会等名
      第63回日本臨床視覚電気生理学会
    • 発表場所
      ミッドランドスクエア(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      2015-08-29
  • [学会発表] White-matter pathway connecting sensory cortical regions involved in optic-flow processing.2015

    • 著者名/発表者名
      Uesaki, M., Takemura, H. & Ashida, H.
    • 学会等名
      European Conference on Visual Perception
    • 発表場所
      リヴァプール(イギリス)
    • 年月日
      2015-08-26
    • 国際学会
  • [学会発表] アンサンブル法による神経線維トラクトグラフィー性能の向上.2015

    • 著者名/発表者名
      竹村浩昌, Brian A. Wandell, Franco Pestilli.
    • 学会等名
      第38回日本神経科学大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場・神戸国際展示場(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-07-28
  • [学会発表] Ensemble tractography: reducing parameter dependency of tracking algorithms.2015

    • 著者名/発表者名
      Takemura, H., Wandell, B.A. & Pestilli, F.
    • 学会等名
      Organization for the Human Brain Mapping
    • 発表場所
      ホノルル(アメリカ合衆国)
    • 年月日
      2015-06-15
    • 国際学会
  • [学会発表] 拡散強調 MRI を用いた視覚情報伝達経路の解明.2015

    • 著者名/発表者名
      竹村浩昌.
    • 学会等名
      生理研研究会「視知覚の現象・機能・メカニズム - 生理学的、心理物理学的、計算論的アプローチ」
    • 発表場所
      岡崎コンファレンスセンター(愛知県岡崎市)
    • 年月日
      2015-06-12
    • 招待講演
  • [備考] CiNet News

    • URL

      https://cinet.jp/news/20160205_1761/

  • [備考] 生きているヒトの脳の神経線維束を見つけやすくする方法を開発

    • URL

      http://www.nict.go.jp/press/2016/02/05-1.html

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公開日: 2016-12-27   更新日: 2022-02-02  

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