研究課題
データにランダムに欠測が生じた際の,特に単調欠測データの統計解析手法について,1. 平均ベクトルの尤度比検定,2. 平均ベクトルのT2乗型検定,3. 分散共分散行列の検定に対していくつかの研究成果が得られている.1については,1標本問題における,尤度比検定統計量の帰無分布について,昨年度の研究成果を補強し,バートレット補正による新たな修正尤度比検定統計量を提案した.バートレット補正を行うことで,標本の大きさが小さい場合にも,より正確な検定を行うことができるようになり,このことは大きな意義があると思われる.さらに多標本問題に拡張した成果も得ることができ,これらの結果をテクニカルレポートとしてまとめ,学術雑誌に投稿中である.2について,1標本及び多標本問題における,T2乗型検定統計量の帰無分布の上側パーセント点を与えることは重要であり,その1つとしてこれまでに,線形補間を用いた簡便な近似を提案してきた.当該年度は,より厳密にT2乗型検定統計量の性質を調べ上げ,これまでの結果と合わせて,成果を学術雑誌に掲載することができた.さらに1標本問題において,摂動法を用いた漸近展開という形で,より正確な近似上側パーセント点を与えることに成功し,バートレット補正による変換統計量を導出した.この内容を整理及び改良し,テクニカルレポートとしてまとめる予定である.3については,1標本問題において,分散共分散行列が,与えられた行列と等しいかどうかの検定及び,無相関であるかどうかの検定に対し,バートレット補正に対応する修正尤度比検定統計量を与えた.この問題を解決させることで,当初の目的であった同時検定を議論することができるようになり,今後進めていく予定である.
2: おおむね順調に進展している
「研究実績の概要」に記載の1,2は計画していた通りの研究成果である.また,研究計画で述べた「1標本問題,2標本問題及び多標本問題における尤度比検定統計量の帰無分布に対する高次の項までの漸近展開の導出」にも取り組んでいるが,計算が膨大で複雑のため,現在進行中である.3については,研究計画にある「1標本問題,2標本問題及び多標本問題における同時検定に対する修正尤度比検定統計量の導出」の中で必要となったため,議論した研究内容である.これについては,まだ改良の余地が残されているため,今後その問題に取り組んでいきたい.上記の研究成果は,国内外の研究者の助言などを受けることによって,新たに導出できた成果でもある.
単調欠測データの下での1標本問題における平均ベクトルのT2型検定については,いくつかの研究成果(漸近展開結果)を得ており,不十分なところを補うとともに整理して,学術雑誌に投稿する予定である.これに引き続き,この問題を2標本問題及び多標本問題に拡張する.また,これに関連して,多標本問題における尤度比以外の検定統計量を導出することも考えている.一方,分散共分散行列の検定問題については,部分的ではあるが,1標本問題についていくつかの研究成果を得ており,その問題をもう一度検討しながら,2標本問題,多標本問題に拡張していく予定である.また,その問題に関連して,平均ベクトルと分散共分散行列の同時検定問題についても,同様に,1標本問題から考え,尤度比検定統計量の帰無分布などについて近似上側パーセント点を与え,近似精度の評価をモンテカルロ・シミュレーションによって行う予定である.これらの問題の応用として,単調欠測データの下での成長曲線モデルや多変量正規性検定,さらには,高次漸近展開についても議論していく.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)
American Journal of Mathematical and Management Sciences
巻: 36 ページ: 1-20
10.1080/01966324.2016.1236712
Technical Report, Statistical Research Group, Hiroshima University, Hiroshima, Japan
巻: 8 ページ: 1-13
巻: 17 ページ: 1-20