研究課題/領域番号 |
15J00430
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
後藤 栄祐 山形大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 非対称ペリレン / 電子欠損 / ブロック共重合 / レジオブロック |
研究実績の概要 |
代表者は、有機金属試薬型モノマーと金属触媒を使用し、有機半導体高分子の精密合成法の開発に関して研究を行った。本年度は、①電子欠損性モノマーの候補であるペリレン化合物の合成方法の開発を行うとともに、②電子欠損なポリマーと電子豊富なポリマーの、将来的なブロック共重合化を視野に、性質の異なるポリチオフェンブロック共重合体の合成を検討した。①通常、非対称ペリレン誘導体は、ペリレン酸無水物に対して異なる2種類の側鎖を導入する方法によって合成されてきたが、対称な側鎖を有する化合物との統計的な混合物となってしまうため、非常に困難な精製とそれに伴う収率の低下が問題となっていた。そこで申請者らは異なる側鎖基を有する二つのブロモナフタレンイミド化合物を用い非対称ペリレン誘導体の合成を行った。本手法によって、ペリレン環を形成する前の段階で、異なる2種類の側鎖をあらかじめ導入しておくことが可能になり、精製作業の簡便化とそれに伴う収率の向上が達成された。同様の手法により、ペリレン環のベイエリアに置換基を導入した化合物や、ジブロモアントラセンをナフタレンの間に導入することで分子量の大きくより高い電子デバイス特性が期待される化合物の合成にも成功した。②また、将来的な電子欠損セグメントと電子豊富セグメントの間のブロック共重合を行うためには、異なる性質を持つ二つの簡便な骨格を用い、重合の検討を行う必要がある。共役系高分子の基本骨格であるポリ(3-ヘキシルチオフェン) (P3HT)はヘキシル基の向きの違いによって電子的および機械的に異なる特性を有することが知られている。そこで申請者らは頭尾結合からなるP3HTと頭頭結合/尾尾結合からなるP3HTを2つのブロック成分とするレジオブロックコポリチオフェンの合成に世界で初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度行った“非対称ペリレン化合物の革新的な合成方法”に関する研究がJournal of Materials Chemistry Cに掲載された。2017 Journal of Materials Chemistry C HOT Papersとして注目の論文に選出されるなど、大きなインパクトがあった。この論文中では、電子欠損モノマーの候補となる、非対称ペリレン化合物の効率的な合成のために、ナフタレン誘導体からの二量化反応と、続く閉環反応の組み合わせに関して議論されており、研究課題である電子欠損モノマーの精密重合へ向けた重要な内容となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は新規合成法を用いて電子欠損モノマーの合成を行い、重合していく予定である。また、電子欠損基と有機金属の共存性を確かめ、相性の良い組み合わせを探索していく。さらに、電子欠損セグメントと電子豊富セグメントのブロック共重合化を視野に、新規なブロック共重合体の合成も引き続き行っていく。
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