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2015 年度 実績報告書

ヒトの離乳は本当に早いのか? 地球化学分析による霊長類の離乳年齢推定

研究課題

研究課題/領域番号 15J00464
研究機関京都大学

研究代表者

蔦谷 匠  京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2018-03-31
キーワード同位体分析 / オランウータン / チンパンジー / 食性 / 離乳 / 授乳
研究実績の概要

野生チンパンジー・オランウータンからの試料採取は順調に進行している。今年度は、国内の動物園および野生の調査地における試料採取手順・システムの確立に多くの時間を割いた。一方、そのため、フィールドワークのウェイトが大きくなり、実験や論分化に割くエフォートが減少した。
ヒトの尿を利用した検討に関しては、定期的に茨城県つくば市に赴き、共同研究者とともに試料を集めており、順調に研究が進行している。2016年度中に、これまでに採集した試料の分析を実施する予定である。
歯を利用した新たな分析法に関しては、フィールドワークに多くの時間をとられたため、あまり進展がなかった。ただし、歯の分析に先立ち、池之端七軒町遺跡から出土した江戸時代の全般にわたる成人骨について同位体分析を実施し、当時の食性およびその性差や時代差を考察し、その成果を英語論文として発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

チンパンジーの離乳年齢復元について、飼育下の個体における検討では、東山動物園 (愛知県名古屋市) において2014年8月に採取した試料と行動データの解析を進めた。野生への応用については、ウガンダ・Kalinzu森林において、40日間程度のフィールドワークを実施した (2015年11-12月)。共同研究者の協力により、チンパンジー母子について、40点以上の糞尿サンプルを採取することができ、日本に輸送した。
オランウータンの離乳年齢復元について、飼育下の個体における検討では、多摩動物公園 (東京都日野市) において、母子2組に対する行動観察と試料採取を継続している。申請者による1-2ヶ月に1度の行動観察と、40点以上の尿サンプルが順調に集まっている。加えて、旭山動物園 (北海道旭川市) において、母子1組に対する試料採取を開始し、継続している。野生への応用については、マレーシア・Danum Valleyにおいて、1か月間程度のフィールドワークを3度実施した (2015年6月、9月、2016年3月)。サンプル採取と保存の手順を確立し、現地アシスタントの協力により、オランウータン母子について、糞尿の採取を開始している。
歯を利用した新たな分析系の確立と検証については、歯の分析に先立ち、池之端七軒町遺跡から出土した江戸時代の全般にわたる成人骨について、炭素・窒素安定同位体分析を実施し、当時の食性およびその性差や時代差を考察した。この成果は、日本人類学会の学会誌に、英語論文として発表した。

今後の研究の推進方策

飼育下のチンパンジーを対象とした同位体分析の基礎検討では、これまでの試料に加えて、京都大学・霊長類研究所との共同研究として、新たに13個体のオトナチンパンジーの毛・糞・尿と食物の安定同位体比を比較するプロジェクトを開始している。これらの結果をまとめて、2016年度中の論文化を目指している。野生から採取したチンパンジー母子のサンプルについては、2016年度に同位体分析を実施する予定である。分析結果は日本霊長類学会などで報告し、国際誌に投稿するための英語論文にまとめる予定である。
飼育下のオランウータンを対象とした基礎検討では、対象とする3個体のいずれのコドモもまだ授乳中であるが、2016年度中に、すでに得られた試料の分析を実施する予定である。それらの予備的なデータをもとに、今後の試料採集計画を検討する。
ヒト母子の尿を利用した条件検討では、試料採集を継続する。2016年度中に、これまでに採集した試料の分析を実施する予定である。
歯を利用した離乳年齢復元の方法論確立・検討では、江戸時代の、出自既知で形質情報が十分に研究されている1個体について、象牙質の窒素同位体比の測定を実施済みであり、2016年度に分析結果を論文にまとめる予定である。
ICP-MSによるエナメル質の微量元素濃度の測定については、共同研究者と、サンプルの調整や測定について計画を相談しており、2016年4月より、実験および測定を開始する予定である。フィールドワークが多かったため、2015年度は実施に至らなかった。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] The diet of townspeople in the city of Edo: carbon and nitrogen stable isotope analyses of human skeletons from the Ikenohata-Shichikencho site2016

    • 著者名/発表者名
      Tsutaya T, Nagaoka T, Kakinuma Y, Kondo O, Yoneda M
    • 雑誌名

      Anthropological Science

      巻: 124 ページ: 17-27

    • DOI

      10.1537/ase.150914

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 子供の骨から離乳年齢を探る2015

    • 著者名/発表者名
      蔦谷匠, 米田穣
    • 雑誌名

      考古学ジャーナル

      巻: 671 ページ: 20-23

  • [学会発表] 縄文時代の離乳年齢: 吉胡貝塚より出土した小児骨の炭素・窒素同位体分析2015

    • 著者名/発表者名
      蔦谷匠, 下見光奈, 藤澤珠織, 片山一道, 米田穣
    • 学会等名
      第69回日本人類学会大会
    • 発表場所
      東京都江東区
    • 年月日
      2015-11-11 – 2015-11-11
  • [学会発表] 自然人類学から見た卒乳・断乳2015

    • 著者名/発表者名
      蔦谷匠
    • 学会等名
      第30回母乳哺育学会学術集会 教育委員会主催勉強会
    • 発表場所
      東京都文京区
    • 年月日
      2015-10-03 – 2015-10-03
    • 招待講演
  • [備考] 江戸町人の食性の個人差

    • URL

      http://tsutatsuta.net/research/description/ikenohatadiet.html

URL: 

公開日: 2016-12-27  

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