本年度に実施した研究は以下のとおりである。 ヒト以外の現生大型類人猿の離乳年齢推定について、チンパンジーの離乳年齢推定では、Kalinzu森林で採取したチンパンジーの毛を輸出するため、ワシントン条約の申請を2017年度に実施した。輸入許可は経済産業省から得られており、ウガンダ側から輸出許可を得て、サンプルを日本に持ち帰り、早い段階で分析する予定である。オランウータンの離乳年齢推定については、飼育下の個体における検討では、多摩動物公園に飼育されているオランウータン母子2組、旭山動物園に飼育されているオランウータン母子1組を対象に、試料の採取と行動観察を継続した。野生への応用については、マレーシア・Danum Valleyにおいて、1か月間程度のフィールドワークを1度実施した (2017年6月)。サンプル採取と保存の手順を確立し、現地アシスタントの協力により、オランウータン母子について、糞尿の採取を完了した。2017年に輸出許可を申請し、すでに承認されている。2018年3月に渡航し、試料を日本に持ち帰って、分析を開始する予定である。 歯を利用した新たな分析系の確立と検証については、象牙質の窒素同位体比の測定の精度を高め、より正確に離乳年齢を推定するために、安定同位体分析の結果を解析するモデルを構築し、現時点での結果を日本人類学会の大会で発表した。今後、モデルをさらに高精度化し、成果を論文にまとめる予定である。また、古人骨の離乳後の食性について、ベースラインを正確に確立するため、これまでに出版された論文をメタ解析し、結果を論文として報告した。 また、安定同位体ではなくタンパク質を対象に離乳年齢を復元する可能性を検討するため、コペンハーゲン大学(デンマーク)に渡航し、3ヶ月間実験やデータ解析を実施した。
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