研究課題/領域番号 |
15J00480
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
土屋 成輝 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
キーワード | 生合成 / 合成 / 質量分析 / 麻痺性貝毒 |
研究実績の概要 |
今年度は、主に推定生合成中間体の安定同位体を用いたラベル化合物の化学合成を行い、藍藻Anabaena circinalisを使った取り込み実験を行った。 各推定中間体のからの変換について質量分析器を用い、生合成との関連について考察、発表を行った。特に、Int-C’2からCyclic-C’への変換については、有機反応の面からの詳細な反応機構と、安定同位体を使った生産生物中での変換過程について明らかにした。 また、安定同位体標識Int-A’を藍藻に投与し、Int-C’2、Cyclic-C’、及び麻痺性貝毒C1/C2がラベル化することを明らかにした。同様に安定同位体標識Int-C’2から、Cyclic-C’、麻痺性貝毒C1/C2が生成することも示した。この結果より、Int-A’、Int-C’2が麻痺性貝毒の生合成前駆体であることがわかった。一方で、安定同位体標識Cyclic-C’からは麻痺性貝毒C1/C2に変換されないことがわかり、生産生物中に新たなシャント経路が存在することを初めて示した。生物における、シャント経路の存在意義についての考察を行う必要がある。 同じく麻痺性貝毒を生産する渦鞭毛藻Alexandrium tamarenseについても、Int-A'、Int-C’2、Cyclic-C’が生体内に存在するので、藍藻と同様の生合成経路・シャント経路を保有している可能性が高い。 現在、安定同位体標識Int-A’やInt-C’2を用い、安定同位体を指標にすることで、生物中での変換生成物の探索を行っている。新たな生合成中間体候補構造が示された。今後、この成分についても生合成経路上の位置づけを明らかにする予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定同位体15Nで標識した予想生合成中間体、Int-A'、Int-C'2、Cyclic-C'の合成を達成した。更に各標識体を、藍藻Anabaena circinalisに添加し、取り込み実験を行う条件の最適化を行った。実際にInt-A'、Int-C'2が麻痺性貝毒の生合成前駆体であり、Cyclic-C'がシャントな化合物であったことをLC-MSを使うことで示すことが出来た。 また、標識体の添加を行うことで、生合成に関連する新たな化合物探索の可能性も得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで、藍藻と渦鞭毛藻における麻痺性貝毒生合成経路に関する知見を得てきた。しかし、もっとも重要な特異な三環骨格の形成段階の生合成中間体を明らかに出来ていない。 安定同位体を指標にした探索を行う予定である。生成量などから判断し、有機合成した標品との比較を行うか、単離を試みるか判断したいと考えている。 また、すでに予想されている、三環を有するInt-E'の化学合成及び質量分析(LC-MS)を用いた同定を行う予定である。Int-E'の存在を明らかに出来れば、三員環の形成メカニズムの解明の一助になると期待される。 これまでに藍藻における取り込み実験を行ってきたが、渦鞭毛藻を使った取り込み実験も行い、渦鞭毛藻の生合成経路の解明も試みる。
|