研究課題/領域番号 |
15J00504
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橋爪 裕人 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
キーワード | 主観的Well-Being / 脱埋め込み / 失業 / 非正規 |
研究実績の概要 |
平成27年度は主観的Well-Beingの規定要因についての国際比較研究を主に行った。特に再埋め込みなき脱埋め込み状態にある後期近代的な社会において、失業や離婚が主観的Well-Beingに対してより大きな負の効果を有していることを明らかにした。この分析に際してはランダム係数を含むハイブリッドモデルという先進的な方法を導入した。主観的Well-Beingの分析にこのような方法を導入したことは学術上の重要な進展である。この成果は第88回日本社会学会大会において「脱埋め込みと主観的Well-Being規定要因の違い――WVSを用いた国際比較から」というタイトルで報告した。 さらなる国際比較研究を進め、主観的Well-Beingのメカニズムを理解するために、日本社会の具体的な変化と主観的Well-Beingの関連を国際比較の軸として明らかにする必要性があった。そこで私は、2つの新たな研究を行った。1つ目は所属している研究室全体で参加しているSSPプロジェクトのデータを用いたものである。2015年と1995年のデータを比較し、非正規や無職の主観的Well-Beingが雇用の流動化や法制度の変化を受けて低下したというよりは、正規職が当たり前には得られなくなったことを受けて、彼らの主観的Well-Beingが上昇したことが明らかになった。このことは、「2015年階層と社会意識全国調査(第1回SSP調査)報告書」に「働き方と主観的Well-Beingの変容――正規の心理的メリット」として執筆した。 2つ目はJLPS若年・壮年パネルデータを用いた研究である。本研究では、失業や非正規の効果のうち、社会的孤立や失業率によって説明可能な部分はそれほど多くないことが示唆された。この内容は公開報告会において「社会的孤立は非正規・失業者に不満をもたらすか」というタイトルで報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、大規模な国際比較データに対して先進的なマルチレベルモデルを適用した分析を行い、後期近代や脱埋め込みといった社会学の重要な論点を主観的Well-Beingの規定要因に関する研究に取り入れることに成功した。この研究成果は日本社会学会における口頭発表においても多くのオーディエンスを得ることに成功し、活発な議論が展開されるに至った。 また、国際比較研究の推進に必要となる日本国内のデータ分析にも着手し、分析結果を発表するに至った。これらは当初予定していたものではなかったが、期待以上に順調な研究成果が得られている。これらの研究において、日本においても社会の変動が主観的Well-Beingに影響していることが示唆され、今後の国際比較研究のための重要な布石となった。 しかしその一方で、国際比較研究に用いたデータに含まれている国のリストと理論との接合などについての課題克服にやや苦しみ、研究成果を論文として投稿するという手順に関しては少しの遅れが生じている部分が否めない。よって全体を総合すると、期待以上の部分もあるが少し遅れが生じている部分もあるために、「おおむね順調」とするのが妥当であろうと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の予定としては、特に脱埋め込みや流動化、グローバリゼーションといった後期近代のパラダイムを表す国レベルの変数が多く利用可能な国に対象を絞ったうえで、より具体的な社会の変動と主観的Well-Beingの関連性に関して検討していきたい。また、複数の国家に関するデータを複数時点分用いることによってより『変化』に着目した研究を展開する必要もあると考えている。 さらに、特に今後力を入れてゆきたいのはこれまでエに得た研究成果を論文歌詞投稿・発表することである。これまでに得られているもの、今後行う研究について速やかに論文として執筆することを計画している。
|