1.昨年度に引き続きNOL11のKD時における分裂期(M期)開始遅延の解析を行なった。NOL11のKD細胞ではM期開始の遅延に加え、rRNA転写量が低下し、核小体が崩壊した。これまでに核小体崩壊は、様々な細胞プロセスに関与することが報告されているため、核小体崩壊がM期開始の遅延を引き起こすことが考えられた。そこで、RNAポリメラーゼIの転写因子であるTIF-IAをKDし、核小体崩壊を引き起こすと、NOL11のKD時と同様にM期の開始の顕著な遅延が見られた。さらに核小体崩壊時のM期開始の遅延は、Wee1キナーゼの異常な蓄積に伴う、M期マスターレギュレーターCdk1の抑制的リン酸化の増加であることを突き止めた。つまり、間期での核小体の維持はCdk1の活性化を通して適宜にM期を開始させると考えられる。 2. M期染色体表層には核小体タンパク質が蓄積し、perichromosmoal region (PR)を形成する。PRには核小体タンパク質に加え、Ki67やリボソームRNA (rRNA)も蓄積する。rRNAは間期において核小体タンパク質の足場となるため、申請者はrRNAがPR構造の決定要因になると考えた。TIF-IAをKDすると核小体タンパク質、rRNAのPR局在が低下した。さらにM期染色体にRNase Aを処理すると、核小体タンパク質がPRから解離することを明らかにした。興味深いことに、これらの条件においてKi67のPR局在は変化しなかった。一方、Ki67をKDすると、rRNAはPR上に局在せず、凝集体を形成することを見出した。以上の結果から、PRは少なくとも三つの領域から構築されているのではないかと推測される。 これらの研究を論文として執筆し、一方はBiochem. Biophys. Res. Commun.に掲載され、もう一方は、Sci. Adv.にてリバイス中である。
|