研究課題/領域番号 |
15J00635
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
尾﨑 真理 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 代官 / 畿内 / 摂津 / 幕領 / 近世 / 上知 / 支配替 / 天保 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、畿内・近国に設置された代官および代官役所の支配替えの分析を通して、近世中後期にける領主-領民関係の変化を読み取り、その政治的・社会的背景を解明することである。 本年度は、①代官役所下僚の史料の収集、分析、②大坂代官支配替忌避歎願書の集積・代官役所の支配地分布図作成のための史料収集を主な課題とした。 ①については、まず大坂代官支配地の長州出兵時の村方史料の収集を行うとともに、村方に残された手代史料(長州出兵時)の分析を完了し、分析結果は(1)代官所機能の変化の前提となる幕末期の地域の変容についてアジア世界史学会(AAWH)第3回国際会議にて報告したほか、(2)代官役所の機能については第54回近世史サマーセミナー全体会報告にて報告を行い、また(3)幕末期において代官役所機能の肩代わりをした雇手代の機能と人足徴発については大阪歴史学会近世史部会にて報告を行った。また(1)は“Local Officials of the Edo Shogunate during the Late Early-Modern Period”と題して正文化した。(2) (3)については分析を継続し、来年度に正文化する予定である。 ②については、「江戸城多聞櫓文書」などの領主側史料、摂河泉播の地方文書に残る代官の「支配村々高附帳」(代官の全支配村・高リスト)などの史料を収集した。これにより当該期の幕府支配の動向、代官所の位置づけについて分析し、代官役所支配地分布の変遷を推定した。史料が散在していることに加え、分析に時間がかかるため、来年度も引き続き史料収集につとめるとともに、分析を進め、来年度末までの正文化を目指したい。 以上①・②の分析をふまえ、日本史研究会にて研究者がフィールドとする畿内・近国地域の支配論・地域論に関する先行研究を整理した後、今後の研究課題や展望を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、①代官役所下僚の史料の収集、分析、②大坂代官支配替忌避歎願書の収集・代官役所の支配地分布図作成のための史料収集を行った。①については長州戦争時に手代として取り立てられた家の史料の分析をほぼ完了したほか、長州出兵時の村方史料や勘定所の記録、また手代のマニュアル本の中から大坂代官の史料を新しく発見し、収集した。後者についての分析は次年度の課題として残された。 また、②歎願書については今年度新たに天保期の支配替忌避の動向がみうけられる史料を発見したほか、東京大学や国立公文書館、九州大学などで代官役所の支配地・高を網羅的に記した史料を集中的に調査した。調査結果の一部は“Local Officials of the Edo Shogunate during the Late Early-Modern Period”と題して正文化したほか、アジア世界史学会(AAWH)第3回国際会議、第54回近世史サマーセミナー全体会報告、大阪歴史学会近世史部会にてそれぞれ報告を行なった。今年度は①、②ともに新たな史料発見があり、史料の収集が順調に進んだが、その分、分析については当初の予定よりも長期間を要することとなり、一部は次年度の課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず今年度すでに収集した幕府や代官史料の翻刻、史料分析を通して①、②の分析結果をそれぞれ正文化することが目標である。また国立公文書館、国会図書館、また東北大学狩野文庫の調査など、引続き幕府史料、代官史料の収集を並行して進めていく。 また2年目の課題として、③村落構造分析を進めていく必要がある。特に領主―領民関係を探るために村や地域における「救済」に注目し、年貢にかかわる救済や地域的入用の検討を進めたい。分析対象としては、年貢にかかわる廻米資料や村・郡中などの入用帳がメインとなる。 また天保期頃を画期に展開していく「郡中(非常)備銀」の検討によって、地域の広域的救済制度の展開と領主的枠組みの関係の変化を解明することで、①、②で検討した領主的枠組みや支配制度と③村落構造の変化を関連付けて解明することが次年度の目標である。「郡中(非常)備銀」については大坂周辺の村文書の収集のほかに、一部手代史料の中にも関連資料が発見されたため、次年度は各種史料の総合的な分析をもとに、正文化を目指したい。
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