I. Ag含有リン酸カルシウム粉末の抗菌性評価 湿式法によりAg含有リン酸カルシウム粉末を合成した。Agの溶解度はハイドロキシアパタイト(HA)よりもβ型リン酸三カルシウム(β-TCP)の方が大きいことを見出した。Ag固溶β-TCPはβ-TCPの溶解に伴いAgイオンを放出することから、同量のAgを含有する金属Ag含有HAよりも擬似体液中へのAg放出量が大きく、長期間の放出を維持することを明らかにした。それに伴い、Ag固溶β-TCPは大腸菌に対する抗菌性を示した。一方、ISO 10993-5に準拠したV79細胞を用いた毒性評価試験を行い、Ag固溶β-TCPは細胞毒性は示さないことを確認した。 II. Ag固溶β型リン酸三カルシウムの構造解析 β-TCP中においてAgはCaサイトに置換することが知られている。本研究では、β-TCP中のAgの位置を明らかにするために、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)の使用方法を習得し、Ag固溶β-TCPを観察した。Agはβ-TCPのCa(4)サイトに存在することを明らかにした。これはシミュレーションの結果とも一致していた。 III. Ag含有非晶質リン酸カルシウム薄膜の抗菌性評価 RFマグネトロンスパッタリング法により、Ag含有非晶質リン酸カルシウム(AgACP)薄膜をTi基板上に作製した。擬似体液への溶解性試験の結果、ACP薄膜の溶解に伴いAgも放出されることを明らかにした。膜厚0.5μmのAgACP薄膜のシェーク法による抗菌性評価方法を確立し、大腸菌および黄色ブドウ球菌のいずれに対しても抗菌性を発現することを明らかにした。
|