研究課題
人の情動カテゴリ(怒りや喜びなど)は発達的に増加していくことが知られているが,情動の認識や表出にかかわる能力がいかにして獲得されていくか,そのメカニズムは定かではない.本研究では人の情動発達過程の構成的理解を次の二つの方法で目指す.一つは深層学習モデルの一種である確率的ニューラルネットワークを用いた人の情動発達過程のモデル化とその計算機シミュレーションである.もう一方は人の生理指標(心拍数や発汗など)の変化をベイズモデルを利用した解析によって可視化し,情動発達過程に対する定量的評価を行うものである.今年度は昨年度成果を得た人の情動発達モデルを利用し,人とロボットの対面インタラクションにおいて人の情動表出を学習し,自身の情動表出を生成することのできる深層学習モデルを提案した.提案モデルは人の表出する「表情」「身振り」「音声」から表出に内在する情動情報を自己組織化的に抽出し,低次元空間でその関係性を表現する機能を持つ.他者の情動表出を学習した提案モデルは,従来のモデルと同様に未知表出に対する情動推定が行えるとともに,推定した他者情動や自己の情動状態に応じて自身の情動表出を生成することが可能である.これまでの人-ロボットインタラクション研究では情動認識システムと情動表出システムは分けてモデル化されることが多かったが,提案モデルでは人の情動認識・表出システムと同じように同一のモデルから両能力を発揮することができる.また同一モデルである利点を活かし,他者の情動表出が一部欠損している場合でも部分観測情報から一時的な情動推定を介し,自己表出の生成能力を利用して未観測情報を補完し再度情動推定を行うことで他者情動推定の精度を向上することに成功した.このような能力は人においてもメンタルシミュレーションとして知られており,提案モデルの妥当性を示唆する結果である.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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