最終年度は昨年度に引き続き南アフリカ共和国・リンポポ帯南縁部に産する変成岩、特にその南縁部にあるHout River剪断帯(HRSZ)の上盤側から採集された泥質・苦鉄質グラニュライトを中心に研究を進め、今までの研究成果をまとめた。なお、昨年度計画していたMurchison地域の研究は時間の都合上全ての研究を終えることができなかったため、現状の報告をする。当該年度の補助金は、分析費、学会参加費(旅費を含む)、消耗品購入等に当てられている。
まず初めに、南縁部に産するグラニュライトの研究成果について報告する。本研究で採集された岩石サンプル約50個の中から、リンポポ岩体南縁部に特徴的に見られる加水反応組織をもつ泥質と苦鉄質グラニュライトの複数のサンプルについて研究を進め、以下の成果を得た。「泥質グラニュライトの解析結果より、流体の浸透した経路と考えられているHRSZから離れるほど流体の供給量は少なくなり、加水反応(Opx+Qtz+H2O=>Anth)が進行するためには多量のH2Oが必要となることがわかった。また、HRSZの下盤側にもH2O流体は浸透していたものの、供給量は上盤側に比べて小さい。しかしながら、下盤側と上盤側に浸透した時期が異なる可能性も考えられるため、浸透した年代について今後研究を進める必要がある」。この研究成果は国際学会(国際ゴンドワナ連合)でポスター発表を行い、現在論文を執筆中である。
次に昨年度計画していたMurchison地域について現状を報告する。本年度は、昨年度に採集したサンプルについて薄片作成および岩石記載を中心に研究を進めるとともに、電子マイクロプローブ分析や全岩化学分析を行った。
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