研究課題/領域番号 |
15J00713
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
岩崎 佳孝 立教大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 先住民 / ネーション / アメリカ先住民 / カナダ先住民 / 混血 / メイティ / ボーダーランズ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近現代(連邦)国家内の先住民の主権体たる「ネーション」の形成と実体を、アメリカ合衆国の事例をカナダ、さらに両国を縦断する先住民(「混血」 )集団(部族)の事例と比較することによって読み解くことにある。本研究では、とりわけその歴史的な成員認識/規定の変遷の分析に焦点を置いて分析を行う。 具体的には1. より研究の視角を広げるべく、合衆国の複数の集団の事例に目を向ける。現時点では、18世紀末から20世紀初頭に至る時期の先住民集団を対象とする。2. 研究をさらに多角的に深化させるべく、合衆国とカナダの双方を縦断する先住民集団および「混血」集団の事例を併せて研究し、1の事例との比較検証を行う。以上の作業を行うことで、北米大陸における先住民集団のネーション構築の在り様と、連邦体制内における先住民主権の実体を明らかにするのである。 今年度は、昨年度に合衆国とカナダで入手した、貴重な一次・二次史料を引き続き精読、分析する作業を継続した。また国内大学のゼミ(1回)および学会(2回)でその時点における研究成果を報告し、聴講者からの助言に基づく研究の修正作業を行った。また、研究書1件、共著1件(5章分)の出版による研究成果の公表を行ない、さらに学術誌への依頼論文の投稿(29年度発行予定)も行なった。一方、2回目となる海外現地調査(合衆国およびカナダ)では、1年目の訪問先を再訪し調査と史料収集を継続すると共に、研究の進捗状況によりさらに訪問の必要が生じた両国の各地を訪れた。そこでは多くの研究者、先住民等と接触し、重要な知見や助言を得ると共に、貴重な史料を収集することにも成功した。 以上によって今年度の研究は、2017年度における研究活動に反映し、さらに年度末に3年間の研究の一定の総括を行なう上で、十分な成果を得ることができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度に引き続き、アメリカ合衆国およびカナダで、先住民、先住民ネーションの成員やネーション政府職員に加え、多くの高名な研究者の知己を得た。具体的な研究調査の目的地としては、カナダでは昨年度も訪れたアルバータ州に加え、同様に研究上重要な地域である米加国境地域(ボーダーランズ)諸州―ブリティッシュ・コロンビア、サスカチュワン、マニトバを訪れた。合衆国では、研究の対象にしている諸先住民集団の一部が、19世紀前半に合衆国政府によって強制的に現在のオクラホマ州に移住させられる以前に居住していた、東部の諸州―ミシシッピ、アラバマ州―における研究調査を行った。 これらの研究調査によって、昨年度以上の研究上貴重な知見や助言、史料の提供、さらには将来的にも研究への協力が得られる、広範な研究ネットワークを構築することができた。以上に加え、特に日本では入手しがたい先住民史、地方史関連のものも含めた大変貴重な史料を収集することができ、それらの精読と分析も着実に進んでいる。 以上に立脚した研究報告や文書による研究成果の公表についても常に準備を整えており、上記「研究実績の概要」および後記「研究発表」に示されている様にそれぞれの段階における成果公表と修正を適宜挟みつつ、本研究は着実に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
「研究計画調書」に記した通り、研究に必要な機材の入手や史料の購入を実施すると共に、引き続きアメリカ合衆国とカナダ両国への渡航研究調査を実施し、研究を一層深化、発展させる。来年度は、合衆国については今年度行くことができなかったものの、研究上重要である米加国境地帯(ボーダランズ)周辺州モンタナ、ノース・ダコタのいずれか、もしくは両州で研究調査を行いたい。カナダでは、上記諸州と同様に研究上重要な諸州のうち、アルバータ、サスカチュワン両州のいずれか、もしくは両州、さらに重要な史料の収集と複数の研究者との面談のためにオンタリオ州オタワにも赴きたいと考えている。加えて予算が許せば、合衆国先住民集団関連の重要な史料が見込まれる英国(特にスコットランドおよびアイルランド)にも調査に赴くことを希望している。 研究成果の公開は現時点では、先の「研究実績の概要」で述べた学術雑誌への投稿に加え、国内大学ゼミ(大阪大学)、招待講義(明治学院大学)、学会報告(日本カナダ学会)を予定している。機会があればこれ以外にも、積極的に研究成果の公表と、それによる内容の修正を行っていきたい。また、今年度に引き続き、博士論文の英語への翻訳や、その一部の海外学術雑誌への投稿の準備も行なう予定である。
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