研究課題/領域番号 |
15J00763
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藏滿 司夢 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 三者間相互作用 / 寄生蜂 / グルコシノレート / カリヤコマユバチ / アワヨトウ / 化学生態学 |
研究実績の概要 |
本研究では、植食性昆虫アワヨトウとその寄生蜂カリヤコマユバチ(以下、ハチ)の系を材料に、植食性昆虫の餌植物種および餌植物に含まれる植物成分が、捕食寄生性昆虫の寄生に与える影響を実験的に評価することを目的としている。昨年度までの研究により、ハチに産卵されたアワヨトウがダイコンを摂食した場合に、イネ科植物を摂食した場合と比べて低くなることが示された。 今年度はまず、ハチに寄生されたアワヨトウがダイコンを摂食すると寄生成功率が下がるという現象の原因を明らかにするために、ダイコンの植物成分の一つであるグルコシノレート類に着目し、同成分の合成品を人工飼料に添加してハチに産卵されたアワヨトウに摂食させる実験を行った。その結果、同成分の濃度が高くなるにつれて寄生成功率は低下し、1寄主あたりからの羽化個体数は減少した。このことから、同成分が先述の現象の原因のひとつであると考えられた。 次に、アワヨトウの餌植物種がハチの寄主探索行動に与える影響について行動実験を行った。カリヤコマユバチの寄主探索行動においては、寄主糞が手掛かりの一つとして利用されていることがわかっている。そこで、異なる餌植物種を摂食したアワヨトウの糞をハチに提示し、反応(触覚を使った接触時間)を比較した。その結果、ハチはトウモロコシ由来の糞に対して、その他の餌植物(インゲン、ダイコン)由来の糞と比べて有意に強く(長く)反応した。この傾向は、寄主糞のエタノール抽出物およびヘキサン抽出物でも同様であったため、この差は糞に含まれる化学成分の定性的あるいは定量的な違いによるものだと考えられた。ハチがトウモロコシ由来の寄主糞に対して相対的に強い反応を示すことは、前述のようにイネ科植物を摂食したアワヨトウがカリヤコマユバチにとって好適な寄主であることを踏まえると適応的な行動である考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、植食性昆虫の餌植物中に含まれる植物成分が寄生蜂の寄生に与える影響を評価できた。また、当初は3年目に行う予定だった、植食性昆虫の餌植物種が寄生蜂の寄主探索行動に与える影響について、計画を前倒して評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はダイコン中に含まれると想定される複数成分のグルコシノレート類のうち、1成分のみを材料に寄生蜂への影響を評価した。次年度はダイコン葉中のグルコシノレート類の定性的、定量的な分析を行い、その分析結果に沿った種類、量のグルコシノレート類の合成品を材料に、寄生蜂への影響を評価する予定である。
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