これまでの検討で得られた心不全による肝障害による血中microRNA-122-5pの変動という現象についてマウスにおける検証実験を行った。具体的にはマウスに対して虚血性・鬱血性の肝障害の誘導を行い、血中micro RNAの濃度を検討した。いずれのモデルにおいてもヒトでの現象を再現する結果が得られた。近年、遊離micro RNAが遠隔臓器に浸潤あるいは吸収され、遺伝子発現を制御する現象が相次いで報告されている。今回の検討によって示された心不全の病態による血中microRNAの変動が他臓器の影響を及ぼしているかどうかの検討を進める必要があると考えられる。 次に、血清中の異種由来のRNAについてシーケンスリードの再解析を行った。これらのRNAが由来する菌株の同定を試みたところこれらのRNAは多くが腸内細菌叢に属する細菌に由来することが確認された。今後、これらのRNAの存在量と病態との関係を検討することによって、新たなバイオマーカーの発見に繋がる可能性があり、検討を進めていく予定としている。 また、本年度においてはmicroRNAの全身に与える影響を観察するため、microRNA33のノックアウト・microRNA33bのノックインマウスを用いた実験も行った。結果としてmicroRNA33aとmicroRNA33bの生体内での働きの違いについて知見を得ることができた。今後のmicroRNA33に関する治療応用において重要なデータとなることが考えられる。
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