研究実績の概要 |
本研究では、通常の固相法などと比較して、簡便に作製可能な”ガラス”を溶融法により作製し、結晶の概念に縛られない新規ガラス活物質の提案・実証をすることを目標とした。 本年度では、リチウム鉄ケイ酸ガラス正極の創製、ならびにガラス構造と電気化学特性の関係の解明を試みた。ガラス構造との関係を明らかにするために、下記のガラス、ならびにガラス中のFe3+の還元を施したガラスを作製した。調査組成は、それぞれ40Li2O-10Fe2O3-50(SiO2,B2O3,P2O5) (mol%,415LFS,415LFB,415LFP)とした。今回、全てのガラスにおいてFe3+のFe2+への還元により、密度(充填率)および電気伝導に関する活性化エネルギーは増加し、室温(25oC)における電気伝導度は低下することを確認した。この理由は、還元熱処理によるガラス構造([FeOx]n-の配位数)変化によることを明らかにした。また、電池特性に関しては、415LFS、415LFBにおいて還元熱処理による放電容量の向上を確認した。これは、還元によるガラス構造変化(6配位Fe2+の増加)により、Fe2+の第2近接にLi+が存在する割合が増加したためであると。一方で、415LFPにおいては還元熱処理により放電電圧が向上しており、リン酸ガラス構造がQ2構造から主にQ1およびQ0構造に変化したことが影響した。以上より、ガラス構造と電気化学物性の関係を明らかにした。加えて、リチウム鉄ケイ酸ガラスがガラス状態のまま充放電反応に寄与していること、充放電反応時の電荷補償はガラス中のFe2+/3+が担うことを明らかにし、リチウム鉄ケイ酸塩ガラスがLIB正極として利用可能であることを初めて明らかにした。また、フッ素置換に伴う影響についても明らかにした。 本年度実績としては、国内学会2件・国際学会3件(内受賞1件)に参加し、論文1報を執筆した。
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