本研究の目的は、戦国期における京都の政治権力と社会勢力との関係や、それらを包摂する秩序の変容を分析することで、戦国期社会像の再構築を行うことである。これを達成すべく、本年度は、①未翻刻史料を中心とした関連史料の蒐集・分析と、②それらを踏まえた国内外での研究発表を行った。 ①に関しては、東京大学史料編纂所・国立公文書館・国立歴史民俗博物館・富山県公文書館などへの出張調査を行い、戦国期を中心とした古記録・古文書などの筆写・複写・撮影を行った。各史料の詳細な検討は課題として残るが、戦国期の政治権力や寺社を分析する土台となる基礎的な作業を進めることができた点は成果である。 ②に関しては、日本古文書学会大会と大阪歴史学会中世史部会にて口頭報告を行い、前者では明応の政変が当時の京都の寺社と幕府との関係に与えた影響を考察し、これを踏まえて後者では、足利義材と義澄、双方の権力体が醍醐寺三宝院などの顕密系の寺院と取り結んだ関係に言及した上で、室町期から戦国期への秩序変容の具体相を提示した。これら報告内容の文章化は概ね完了しており、現在査読誌に投稿中である。 また、アメリカ・南カリフォルニア大学で行われたUSC-Meiji Research Exchangeにおいて、戦国期における幕府と寺社との関係を研究することの有効性とその展望を報告し、日米双方の研究者との活発な意見交換を行った。今後も引き続き、日本国内にとどまらない研究成果の発信・公表を行っていきたい。 これらと並行して、関西圏以外で開催される学会へも積極的に出席し、最新の研究成果の摂取に努めるとともに関連諸分野に関する知見を広げた。
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