研究実績の概要 |
1.葉緑体を置換した渦鞭毛藻におけるクロロフィルa(Chl a)合成系遺伝子配列探索 研究対象とした葉緑体置換系統11種のうち、本年度は5種の渦鞭毛藻においてプロトポルフィリンⅨをChl aへと変換する既知6段階反応に係る遺伝子配列の探索を実施した。そのうち4種(Durinskia, Kryptoperidinium, Karenia, Karlodinium)についてはMarine Microbial Eukaryote Transcriptome Sequence Projectに公開されている網羅的発現遺伝子データより本合成系遺伝子配列の探索を行った。残り1種(Lepidodinium)については所属研究室で取得していた網羅的発現遺伝子データより本合成系遺伝子配列の探索を行った。その結果、調査したいずれの渦鞭毛藻からもChl a合成系6段階反応中5段階に関与する遺伝子の同定に成功した。 2.葉緑体を置換した渦鞭毛藻におけるChl a合成系遺伝子の系統解析 次に、1.の調査にて同定したChl a合成系5段階に関与する遺伝子について最尤法およびベイズ法による分子系統解析を行い、5種の渦鞭毛藻がもつこれら遺伝子の起源を推測した。その結果KareniaおよびKarlodiniumでは葉緑体の起源となった共生ハプト藻由来の遺伝子が5段階全てに関与していることが判明した。一方、緑藻起源の葉緑体をもつLepidodiniumでは本合成系2段階に共生緑藻由来遺伝子が関与していたが、これらの遺伝子に加えて本種からは共生藻とも渦鞭毛藻とも系統的に離れた生物と起源を共有する遺伝子を複数検出した。本年度得られた成果は、葉緑体置換系統におけるChl a合成系進化傾向に多様性があることを解明するとともに、この進化傾向の多様性が生じた要因を追究する、さらなる発展的研究への基盤を築くものとなった。
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