中心動脈から末梢動脈へと脈圧が増幅していく生理学的現象は脈圧増幅と呼ばれ、脈圧増幅の低下は従来のリスク指標に独立した心血管疾患の予測因子である。一方で、SFRP5は炎症性因子の制御を介した心血管保護作用やインスリン感受性の改善作用を有し、肥満により産生が抑制される。本研究では、肥満男性における生活習慣改善により、脈圧増幅が増大するメカニズムにSFRP5が関与するかを検討すること、さらに、有酸素性運動トレーニングや食習慣改善といった介入方法の違いが、肥満男性の脈圧増幅および血中SFRP5濃度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 平成29年度は、最終年度として、12週間の有酸素性運動トレーニングと12週間の食習慣改善の単独介入、およびそれらの併用介入で収集した全てのデータを解析した。そして、有酸素性運動トレーニングの単独介入で得られた成果を国際学会で発表した。さらに、有酸素性運動トレーニングの単独介入と食習慣改善の単独介入、およびそれらの併用介入で得られたそれぞれの成果を国際学術誌へ報告し、それらの論文が受理された。 現在までに、「肥満男性における脈圧増幅は、従来の測定部位である大動脈-上腕動脈間ではなく、大動脈-大腿動脈間で評価すべきであること」、「12週間の有酸素性運動トレーニングおよび食習慣改善の併用介入により、肥満男性の脈圧増幅が増大すること」、「12週間の有酸素性運動トレーニングの単独介入により、肥満男性の脈圧増幅が増大すること」、「生活習慣改善による血中遊離脂肪酸の変化は上肢脈圧増幅の変化と関連するが体幹脈圧増幅の変化とは関連しないこと」を報告した。今後は、血中SFRP5濃度などの未公表データを国際学術誌へ報告する予定である。
|