研究課題/領域番号 |
15J00848
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤阪 辰太郎 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
キーワード | サルトル / 実存主義 / 倫理学 / 他者論 |
研究実績の概要 |
本年度の研究は以下のように進行した。 ①当初の研究目的のもと、サルトルの文学論『文学とは何か』および死後出版された遺稿『倫理学ノート』にみられる作家と読者の関係を明らかにする研究論文を日仏哲学会会報に発表した。これは、昨年度までの研究成果をまとめたものである。この成果を通じて、サルトルが〈読む〉という経験のなかに見出した倫理的次元を解明した。その際、作家と読者のあいだに結ばれる自由な関係の成立不可能性の自覚という観点を新たに付け加えた。 ②サルトルの前期哲学においてひろく人間的行為全般にかかわる「対自存在」の出現について研究し、読書経験に限られない行為全般の根拠についての理解を深めた。その成果を国際ワークショップで発表した。 ③8月よりベルギー・リエージュ大学にて研究滞在を行った。その際、サルトル研究を専門とする研究者の指導を仰いだ。当地では、サルトル哲学についてより広い視野から理解を深めるため、その形成の背景をなす1920年代から1930年代フランスにおける学問的動向について、とりわけ現象学および実存哲学の受容に焦点を当てつつ、文献調査および学会への参加を通じて理解を深めた。この点についての成果は未だ公表していないが、次年度にかけて発表してゆくつもりである。このほか、滞在中にベルギー仏語圏およびフランスにおける近年のサルトル研究の動向を、文献を用いて、さらに学会等に参加することを通じて調査した。 このほか、日仏哲学会の依頼をうけ、研究課題と関連する書評論文を執筆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は学会発表1件、学術論文1本、書評論文1本を公表した。学術論文にかんしては、サルトルの1940年代における文学的経験論の構図を捉えなおすものであり、当研究課題にとって、公表に至った意義は大きいと考えている。 研究の進展について、個別の内容にかんしては当初の研究計画に必ずしも沿わない形ではあるが、全体としては着実に進展している。ベルギー・リエージュ大学での在外研究を通じて、研究課題に関して新しい角度から理解が進んだ。 研究成果の報告件数が昨年度と比べ減少しているが、現在、成果をまとめる段階にあり、次年度以降、積極的に公表してゆくつもりである。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度中に進められた研究については、関連する学会誌への論文投稿および研究発表を行うことで、成果を公表し、フィードバックをうけて自身の研究を高度化させてゆく予定である。また、海外での研究滞在を通じた学術的なネットワークを活かし、日本国内に限らず、英語圏やフランス語圏での研究成果の報告も視野に入れつつ発表媒体を検討したいと考えている。
|
備考 |
業績一覧をResearchmap上で公表している。
|