研究課題/領域番号 |
15J00882
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐野 泰之 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | メルロ=ポンティ / ギュスターヴ・ギヨーム / ダニエル・ラガーシュ / 哲学 / 現象学 / 言語学 / 精神分析 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、メルロ=ポンティ中期思想の形成において重要な役割を果たした「人間科学」の論者として、1. 言語学者ギュスターヴ・ギヨームと2. 精神分析学者ダニエル・ラガーシュに注目し、彼らの議論とそれらがメルロ=ポンティに及ぼした影響について考察した。 1については、2015年10月の関西哲学会の発表において、メルロ=ポンティとギヨームの言語変化をめぐる議論の詳細な比較読解を通して、メルロ=ポンティがギヨームの言語理論を一つの手がかりとしながら「偶然のなかの論理」という歴史についての独自の考えを練り上げたことを明らかにした。この研究は、共時態と通時態の相互包摂というメルロ=ポンティのいわゆるソシュール「誤読」に対してギヨーム理論の受容という新たな観点から説明を与えるとともに、これまで直接読み解かれることのなかった言語変化についてのギヨームの議論を紹介したという点で極めて大きな意義をもつ。 2については、メルロ=ポンティが中期のいくつかの講義録と草稿の中で、言語性幻覚についてのラガーシュの議論を通して言語の基盤に投影‐同一化という機制が存在することを発見し、さらにその発見が後期思想の重要概念である「肉」の前駆の一つとなっていることを明らかにした。ただし、この成果は平成27年度中に発表の機会を得られなかったため、次年度に発表・論文投稿を行なう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献調査・読解そのものは極めて順調に進展したが、上記の通り成果の一部を平成27年度中に発表することができなかったため、進捗は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究によって「ソルボンヌ講義」については一定の成果と展望が得られたため、平成28年度は当初の計画通り講義「感覚的世界と表現の世界」及び「言語の文学的用法の研究」の読解を進める。また、上記2の研究成果は2016年9月のメルロ=ポンティサークルにて発表することが確定している。
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