研究課題/領域番号 |
15J00899
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大林 太朗 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 東京市 / 関東大震災 / スポーツ政策 / 震災復興 / 公園 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、関東大震災(1923年)を契機とした東京市のスポーツ政策の変容と展開について明らかにすることである。とくに、1920年代の市政において、スポーツ関連施策を担っていた社会教育課、震災後に55の公園整備を主導した公園課の各施策に焦点を当て、被災地の復興という文脈におけるスポーツの活用、またその役割について歴史学的に検討するものである。史料には、公文書や関連雑誌、新聞等を用いる。 初年度となる平成27年度は、都内の公文書館、図書館また古書店にて関連史料を収集し、批判的検討の上でそれらの分析を行った。その結果、下記の内容が示唆された。 1.震災対応に当たった第8代市長永田秀次郎は、東京市の復興に向けた強い心身の育成を企図し、市民体育の重要性を説いた。2.社会教育課によるスポーツ関連施策は、震災前は「夏季林間修養会」のみであったが、震災後の1924年度以降は顕著に増加し、運動競技会や公開講座を含む13項目に多様化した。3.東京市公園課は政府復興局公園課と協力し、55の「震災復興公園」を新設した。そのうち、隅田・錦糸・浜町の大公園には各運動施設が、市内各所に設置された小公園には児童の運動場を含む「積極的なリクリエーション」の場が整備されるなど、市民のスポーツ環境は震災からの復興過程を通して格段に拡大した。 これらの成果をもとに、次年度はとくに(1)公文書・新聞に関する時代背景を踏まえた史料批判の精緻化と、(2)復興公園に関する運動公園としての利用実態に関する分析を行いたい。そして研究の総括をもって、戦前日本のスポーツ史に新たな観点を提供するとともに、歴史学の立場から、「スポーツを通した震災復興」という現代的課題に対する議論の材料を提示したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度(1年目)の研究計画をおおむね着実に遂行し、震災後における東京市のスポーツ政策(社会教育課、公園課)について史料収集と分析を行った。その結果、各研究課題に対し一定の成果を得られたほか、国際学会で若手の最優秀発表賞を受賞したことで、本研究に関する国内外から多様な意見・アドバイスをいただいた。その過程で、「関東大震災からの東京市の復興と1940年、1964年の東京オリンピックとの関連」という新たな課題が見いだされ、本研究の将来的な発展に向けたアイデアも創出された。 一方、予定していたアメリカでの公園史料調査については、これまでの研究状況を鑑み、さらなる事前調査の必要性が明らかになったため、未実施となった。今後の研究状況により、その調査の必要性を検討したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は史料の収集と関連論文の投稿に注力してきたが、今後は先行研究に照らしたそれらの批判的検討と、研究の総括を進めたい。 今後の当面の主要課題は、1) 公文書・新聞に関する時代背景を踏まえた史料批判の精緻化、2) 関東大震災前の東京市におけるスポーツの状況に関する状況の検討、3) 復興公園に関する運動公園としての利用実態に関する分析である。3)については史料が断片的であるため、さらなる収集を検討したい。そして、すでに実施した社会教育課各施策の分析を含めて、研究目的に対する成果の総括を行う。
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