研究課題
本研究は、レーザー核融合実験のためのトリチウム添加ターゲット作成に関する技術の開発である。レーザー核融合実験において、D-D核融合反応とD-T核融合反応の反応断面の違いを用いて2つの中性子の発生数比からイオン温度を測定するために、トリチウムを添加した重水素化プラスチックシェルターゲットの開発が求められている。トリチウム添加ターゲットの作成にはポリスチレンシェルを一旦作成し、トリチウムガス中でトリチウムとポリスチレンシェルターゲット中の重水素を添加する手法(Wilzbach法)を用いた。本年度は、ポリスチレンに紫外線を照射してトリチウム添加を促進する手法の基礎研究を行った。まず、目標添加量を達成するための条件を得るため、紫外線照射エネルギーによる添加効果の検証を行った。紫外線の照射エネルギーを変え添加されたトリチウム量を測定する実験を行った。これにより、トリチウムの添加量が紫外線の照射エネルギーに比例し、照射しない場合に比べ約9倍のトリチウムが添加されることが分かった。その次に、ポリスチレン中のトリチウム空間分布についての研究を行った。トリチウムを添加した薄膜の断面をオートラジオグラフィ法によって測定した。この結果は、ベータ線の飛程と紫外線の吸収を考慮したモデルによって説明することができ、トリチウムは照射した紫外線の吸収分布に従って分布していることが分かった。これらの結果より、紫外線によるトリチウム添加促進手法の基本的な特性を理解することができた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は紫外線による添加促進手法に関する基本的な特性に関する研究を行った。実ターゲット作成については照射方法の検討と備品の購入を進めた。紫外線照射による添加促進のメカニズムについては、赤外吸収分析と熱分析を行った。今年度中に結論を出すまでには至らなかったが、実験に必要な物品の購入が完了し、今後実験を重ねていく予定である。
H28年度は、メカニズムの解明を続ける。前年度に引き続き、赤外吸収や熱分析を行う他、トリチウムを添加したサンプルを用いて分子中のトリチウムの結合位置を調べる実験を計画している。また、実際のターゲット作成を始め、紫外線の照射系の作成を行う。紫外線照射のほか、プラズマ照射等の添加促進手法について検討を行う。
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Sensors and Materials
巻: 27 ページ: 229-235
10.18494/SAM.2015.1060