研究課題
本研究はレーザー核融合のプラズマ温度評価のために燃料ターゲットにトリチウムを添加する技術を開発するものである。平成27年度までに、紫外線を用いたトリチウムの添加効果及び、ポリスチレン材料中のトリチウムの空間分布を明らかにした。平成28年度は、紫外線による添加促進効果の過程を測定するためにラマン分光を行った。管理区域外の測定装置を用いるため、三重水素の代わりに重水素で代用して実験した。重水素を充填した容器にポリスチレン薄膜を設置し、紫外線を照射した。紫外線の照射量が増加するにつれ、主鎖に結合している振動のピークが増大している傾向が得られた。これにより、紫外線によって添加された水素は主に主鎖に結合していることが示唆される。しかしながら、ラマンスペクトルの迷光によるノイズが大きいため、定量的に議論には至っていない。この迷光は照射目には見られなかったもので、紫外線照射による影響によって、今後は中心波長を変えるなどして、高分解能のデータの取得を目指す。また、トリチウム添加ターゲットのプラズマ温度評価のクロスチェックのために、X線による電子温度計測のためのCu含有ターゲットの開発を行った。オレイン酸銅をターゲット材料に用い、マイクロ流体デバイスを用いたエマルション法で中実球を作成した。作成した中実球の成分及び形状を測定し、シミュレーションと比較することで実験に導入可能であることを明らかにした。このターゲットをレーザー実験に用いて、X線を分光することにより、プラズマの電子温度を測定することに成功した。
3: やや遅れている
平成28年度は当初の計画通り赤外分光による水素の結合位置の解明を進めた。結合位置の解明を示唆するようなデータが得られた。当初はトリチウムを1%添加したシェルターゲットを作成する予定であったが、完成には至っていない。プラズマ温度計測用にCuを含有するターゲットを作成しX線分光からプラズマ温度を測定することに成功した。
平成29年度はラマンス分光による高品質なデータを取得し、紫外線による添加促進メカニズムを解明する。また、トリチウムを添加したポリスチレンを実際に大型レーザー実験に導入するために、真空容器内の気体中及び壁面への影響を測定する。
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Fusion Engineering and Design
巻: 112 ページ: 269-273
10.1016/j.fusengdes.2016.09.005