噴煙を伴う爆発的な火山噴火で噴出した粒子が、水平-鉛直2次元空間を輸送し、地表に堆積する輸送過程に関する理論的研究を実施した。具体的には、降下開始高度およびソース粒子サイズ分布(Grain-Size Distribution、以下GSDと表記)が一定の場合および、降下開始高度が一定かつソースGSDが時間変化する場合について、ソースでの条件と形成される堆積物の特徴の間に成り立つ関係を導出した。 風がなく、一定の高さから粒子が堆積する場合、必ず、正級化構造が形成されることが、これまでの解析から示される。一方、一回の噴火で堆積した降下火砕堆積物でも、正級化構造だけはなく、逆級化構造の例も観測されている。本年度に行った降下開始高度およびソースGSDが一定の条件下における理論的研究では、風と噴煙内部の粒子輸送を考慮することによって、逆級化構造が形成される条件を導出し、級化構造に対する風の影響を数学的に明らかにした。この結果を新燃岳2011年噴火の堆積物で観測される逆級化構造に応用した結果、この噴火では風の影響によって逆級化構造が形成されたのではなく、供給源において、粒子サイズが相対的に大きいサイズに時間とともに変化した可能性を示唆した。 また、降下開始高度が一定かつソースGSDが時間変化する場合について、ソースGSDの時間変化と堆積時GSDの時間変化の定量的な関係式を導出した。この関係式は、観測可能な堆積物のGSD層序変化からソースGSDの時間変化がモデルから推定可能となった。この結果を2011年霧島新燃岳噴火の堆積物に応用した結果、推定されたソースGSDの時間変化から、粒子供給源である火口での噴出率の時間変化を推定できることを示した。 上記と同様の応用が他の噴火事例に対しても可能である。今後、本研究結果の応用により、従来よりも詳細な噴火の情報を降下火砕堆積物から抽出されることが期待される。
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