研究実績の概要 |
昨年度に引き続き大水深淡水湖の深水層に生息する細菌系統の知見の整理(1)を進めるとともに、新たに採集した琵琶湖サンプルを用いてメタゲノム解析(2)およびビローム解析(3)を行った。 上記(1)に関しては、CL500-11, CL500-3, CL500-15, CL500-37, Nitrosoarchaeum等の深水層特異的な細菌系統をFISH法を用いて顕微鏡下で特異的に染色・定量することに成功し、日本全国の大水深湖で採集したサンプルを用いて、その量的な重要性を明らかにした。さらに、シーケンスした16S rRNA遺伝子領域の変異を1塩基レベルの解像度で検出し、系統内の隠れた多様性を明らかにする手法(oligotyping)を用いて、湖ごと、深度ごとの比較を行い、既知の淡水産の細菌系統(acI系統やLimnohabitans等)においても、深水層に特異的な亜集団が存在することを明らかにした。 上記(2)に関しては、琵琶湖沖定点で季節的に採集したサンプルより細菌DNAを抽出し、ショットガンシーケンス・アッセンブルによる優占系統のゲノム構築を試みた。これにより、CL500-11, Nitrosoarchaeumをはじめとする深水層特異的な細菌のゲノムを9割以上の復元率・純度で構築することに成功した。 上記(3)に関しては、(2)のサンプリングの副産物として得られるウイルス画分(<0.2μm)の湖水を利用し、濃縮・精製したウイルス粒子よりDNAを抽出し、ショットガンシーケンス・アッセンブルによるウイルスゲノムの構築を試みた。これにより、100を超える完全長のウイルスゲノム、5000を超えるウイルスゲノム断片(>5kbp)が得られ、琵琶湖深水層で優占する重要な細菌系統であるCL500-11やNitrosoarchaeumに感染するとみられるウイルスも複数見つかった。
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