研究課題/領域番号 |
15J01029
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
巫 リャン 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 人口移動 / 台湾人 / 中国大陸人 |
研究実績の概要 |
研究の目的は、「移動」という社会の動態を分析する視点から、20世紀における中国大陸籍者および台湾籍者の移動と日本社会との関係を明らかにすることである。そのために、具体的には次の三つの課題を設定した。①帝国期(1895~1945年)の日本をめぐる中国大陸籍者と台湾籍者の移動の全体像と実態を検証する。②戦前の移動状況を踏まえ、占領期の移動研究の成果を再検討する。③冷戦期の日本をめぐる中国大陸籍者と台湾籍者の移動の全体像と実態を検証する。27年度は主に①に注目した。 帝国期における移動を考察するために、中国大陸に留学した台湾人に焦点を当てた。従来の研究が「抗日」の側面ばかりを強調してきたのに対し、あらためて留学生の事例を具体的に検討して類型化を行った。このことで、これまで充分に論じられてこなかった全体像と、移動や就学のための柔軟な行動様式を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①(資料調査)国会図書館、外交史料館にて戦前中国大陸に所在した台湾人に関する史料収集を3回にわたり行い、台湾の中央研究院近代史研究所、国立台湾図書館、台湾文献館にて、台湾に現存する台湾人の出入国に関する台湾総督府公文書や日本統治時代の各種資料を収集し、また、上海档案館と上海図書館にて、上海に残っている戦前の台湾人の動向に関する資料を集めた。 ②(研究報告)その成果として、2015年6月に日本移民学会年次大会で戦前における中国大陸籍者と台湾籍者の移動の状況について「帝国期日本をめぐる大陸籍者と台湾籍者の移動―1895~1937年を中心に」という題目で報告を行い、2015年11月に京都大学人文科学研究所「転換期中国における社会経済制度」共同研究班で「日本統治期における台湾人の移動―1895年から1937年まで中国大陸に留学する台湾人を中心に―」という題目で報告を行った。 また、2016年2月に他の2名の若手研究者と共同で企画・開催した『2015年度東アジア若手人文社会科学研究者ワークショップ』において「日本における人口移動の研究」という研究紹介を行い、中国・台湾の若手研究者と国際学術交流を行った。 ③(論文執筆)「日本統治期における台湾人の移動―日中戦争前に中国大陸に留学する台湾人を中心に―」という論文を執筆し、『人間・環境学』(査読付き)という学術雑誌に投稿した。現在査読審査中である。 また、京都大学地域研究統合情報センターの中山大将助教と「メディアと記憶が創る樺太の〈戦後〉:東アジアの複数の〈戦後〉とメディア」(王柳蘭編著『声を繋ぎ、掘り起こす:多声化社会の葛藤とメディア』(CIAS Discussion Paper No.66)京都大学地域研究統合情報センター、2016年3月、43-50頁)を執筆した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は学生以外の階層の人々に注目しながら、占領期の再検討及び冷戦期(1952~1990年)における中国大陸籍者と台湾籍者の移動について研究する。 ①(資料調査)国会図書館、外交史料館に足を運び、史料収取と分析を行う。また、台湾の国史館、中央研究院近代史研究所、国家図書館、台湾図書館で戦時中及び冷戦期の関連資料を閲覧する。台湾の研究者の研究成果も同時に収集し、戦前生まれ台湾在住者のインタビューなどを行う。一方、中国上海档案館や南京第二歴史文書館にて、資料を収集する。 ②(論文執筆と成果発表)およそ二ヶ月の国内外調査から、その成果を日本移民学会や中国南京大学と京都大学共催のワークショップで発表する。所属する日本台湾学会の発行する『日本台湾学会報』(査読誌)と所属する研究科の発行する『人間・環境学』(査読誌)に論文を投稿する。
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