研究課題
<ネマチック液晶ゲル>液晶ゲルは、ネマチック相を示す液晶化合物とオルガノゲル化剤をサンプルチューブに入れ、160℃で加熱溶解することによりオルガノゲル化剤の量が異なる3種類(液晶に対して、それぞれ5wt%、10wt%、20wt%のオルガノゲル化剤を含んでいる)の液晶ゲルを調製した。SQUID磁束計を用いてモル磁化率の温度依存性を測定したところ、ゲル化剤を添加していない液晶化合物のみのモル磁化率よりも液晶ゲルのモル磁化率の方が、昇温過程において、結晶相から液晶相または液晶ゲル相への相転移の際に、著しい増加が見られた。さらに、温度可変EPR測定を行ったところ、オルガノゲル化剤の量が多いほど、昇温過程において、結晶相から液晶相または液晶ゲル相への相転移の際に増加する相対磁化率の値が大きく、10wt%と20wt%で磁化率の上昇値が変わらないことから、10wt%加えたところで、磁化率が飽和したと考えられる。<スメクチック液晶ゲル>液晶ゲルを上記のネマチック液晶ゲルと同様に調製した。具体的には、スメクチックC相を示す液晶化合物とオルガノゲル化剤をサンプルチューブに入れ、160℃で加熱溶解することでオルガノゲル化剤の量が異なる3種類(液晶に対して、それぞれ5wt%、10wt%、20wt%のオルガノゲル化剤を含んでいる)の液晶ゲルを調製した。SQUID磁束計を用いてモル磁化率の温度依存性を測定したところ、ネマチック液晶ゲルと同様、ゲル化剤を添加していない液晶化合物のみのモル磁化率よりも液晶ゲルのモル磁化率の方が、昇温過程において、結晶相から液晶相または液晶ゲル相への相転移の際に、著しい増加が見られた。さらに、より詳細な磁化率の増加を議論するために、温度可変EPR測定を行い、線幅の温度依存性を検討したが、オルガノゲル化剤を添加した影響は見られなかった。
1: 当初の計画以上に進展している
武元佑紗氏は当該3年間における研究計画として、本年度はナノチューブの合成と液晶ゲルの調整を行う予定であったが、液晶ゲルの研究のみに従事し、3年間かけて行う液晶ゲルの合成・調整・各種測定実験のほとんどを今年度でほとんど完成させた。来年度は、ナノチューブの合成と物性評価および液晶ゲルの残りの研究を行う予定である。次項および研究発表の項に記載されているとおり、武元氏はこれらの研究成果を積極的に公表し、学会誌等への発表2件、学会発表8件の業績を残した。また、京都大学アカデミックデイにおいて他分野の研究者や高校生などの一般の人々に研究紹介を行い、アウトリーチ活動にも積極的に参加を行った。以上より、本年度の武元佑紗氏の研究は期待以上の研究の進展があったと判断した。
磁性ナノチューブの研究では、アルキル鎖における二重結合の数と位置、親水部分をグルコースやガラクトースなどに代えることにより、ナノチューブの合成を目指す。調製したナノチューブについては、構造(螺旋ピッチや内径)を明らかにする。また、磁性ナノチューブでは、SEM、TEM、AFM、SAXS等を用い、ナノチューブの会合構造について検討を行う。ついで、温度可変EPR測定を行い、得られる磁化率の温度依存性の結果から、会合体の超構造が分子間の磁気相互作用に与える影響について検討する。液晶ゲルの研究では、キラルな液晶を用いた液晶ゲルの調製を試み、SQUID磁束計を用いた磁気相互作用の検討を行う。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件)
Chemical Communication
巻: 52 ページ: 3935と3938
10.1039/C5CC09202G
Soft Matter
巻: 11 ページ: 5563と5570
10.1039/c5sm01216c