研究課題
研究目的は、中国の戦略的行動の変化と中国における民軍関係の間にあるパターンを記述し、それらの間にある潜在的な関係を解明することにある。そのため、中国の政権の変化に沿って4つの時代区分に分けて、公式文章や声明などに見られる政治・軍事ディスコースや戦略ナラティブの言説分析や特異な事象の事例研究などを行う。とくに、ロシアの影響力と利害のある中央アジアと日本を含む東アジアにおいて、中国がどのように戦略的利益を追求するのか、検証することにある。特別研究員としての1年目は、2つの方向性に焦点を絞って研究を行った。まず、胡錦濤政権(2003-2013)と習近平政権(2013-) において、中央アジアにおける中国の戦略的行動に関する分析をさらに進めた。それによると、当該地域における安全保障の優先事項と軍の役割について、文民アクターと軍事アクターとの間に一致が見られ、これまでの仮説を追認する結果が得られた。次に、中国の政治エリートによる日本に関する談話コーパスを収集し、戦略的行動と談話の相関関係の分析に着手した。手始めに、日本による近年の尖閣諸島国有化にまつわる中国の戦略的行動を分析し、地域の安全保障環境の変化について考察した。これについて、軍事手段の使用に関して文民アクターと軍事アクターの間にある程度の合意が認められるものの、検討されていない他の文脈があるため、追加分析を準備している。また、分析にアフリカ地域を加えて、中国の安全保障協力の歴史的経緯と変化する国際関係の現状について、新たな方法論を使用して検証してみた。以上の研究成果は、北京や米国の国際会議で口頭発表され、一部はオーストラリアの学術雑誌の査読付論文や日本の書籍ならびに国際刊行物の一部として収録されることが決まっている。配分された研究費は上記の国際会議への旅費や資料収集のための書籍購入や図書館への出張のために使用された。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した研究実施計画にある通り、海外での学会発表や国際論文の投稿を行うなど、ほぼ計画通りに研究活動が行われたため。なお、想定していなかった米国での国際会議参加のための海外出張があり、執行計画の一部を変更した。
平成28年度は、平成27年度の研究を踏まえ、データ分析やその結果の発表を中心に行い、論文執筆により時間を費やす。平成27年度に十分に行えなかった資料収集や調査研究旅行を平成28年度に遂行することを念頭におきつつ、研究成果の公表のための学会参加のために国内外出張を予定している。現在、北京の外交学院で開かれる予定の「第13回東アジア・シンポジウム会議」での学会発表に応募しており、採択されれば出張する予定である。また、フランスの国立科学研究センター(CNRS)の言語系機関誌へ言説分析に関する特集号を組む企画を提案していたところ、企画が採用された。編集作業はもとより、本研究で扱う予定のテーマに関する論文を執筆しようと考えている。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件) 図書 (2件)
East Asia Security Centre's Peer-Reviewed Publishing Site (http://epublications.bond.edu.au/eas_centre/), Bond University, Gold Coast (Australia))
巻: なし ページ: 該当無し
Border and borderland in Asia Pacific: Interaction, ruptures and reconciliation (A. Kizekova & M. Strasakova (Eds.), Newcastle-upon-Tyne (UK), Cambridge Scholar Publishing)
巻: なし ページ: 印刷中