平成27年度は琵琶湖を含む全国の湖沼から試料を採集した。琵琶湖では月に一度、水深70mの地点で表層から深層にかけて複数の水深から採水を行った。琵琶湖を除く全国湖沼の調査は貯水量、表面積が大きい湖沼のうち本年度採水が可能な14の湖沼で行った。調査は湖が成層している7月末から10月末にかけて行い、表層から深層にかけて複数の水深から採水した。採水した試料は細菌の群集解析用、系統ごとの定量解析用、及び溶存有機物分析用に前処理を行った後に冷凍で保存した。 今後の解析に使用する手法の条件検討は進みつつある。細菌の群集解析を行う手法はDNA抽出から解析まで整いつつあり、この手法を用いて平成25年度に採集した琵琶湖の試料を解析した。その結果、琵琶湖の表層の細菌群集は流入する河川の群集とは異なることが明らかになった。細菌群集の中には特に優占している細菌もおり、これらの細菌の相対存在量は季節により大きく変動している傾向が見られた。河川と湖沼では溶存態窒素有機物の濃度が異なった、また同じ地点においても季節により水温、及び溶存態有機物の濃度が変動していた。これらの優占する細菌の中には世界の湖沼で広く発見されているものも含まれており、温帯域の湖沼におけるこれらの細菌の季節動態と環境変動との関係はその生態に新たな知見を加えることが期待される。 特定の細菌のみを染色し、現存量を定量的に計測する手法は改良が加えたれた。これまでの手法で染色した細菌は蛍光強度が弱いため肉眼による観察が困難であった。そこで、本年度はプログラミングソフトRを用いた画像解析を導入し、蛍光強度の低い試料でも細菌を検出できるようになった。 これらの手法を全国湖沼の試料に用いることで、全国大型湖沼の成層期における細菌の群集構造、及び優占する細菌の現存量が明らかになることが期待される。
|