研究課題
今年度の4月から7月にかけては,拡張された量子色力学の研究を中心に行った.8月以降は,格子上のグラディエントフローとくりこみ群の関係を中心に研究を行った.拡張された量子色力学についての研究は,主に大阪大学助教の深谷英則氏と共同で,低エネルギーの振る舞いを2次元の簡単なモデルで解析した.その結果,理論が本来もつ場の自由度とは異なる場の自由度を含めるという,くりこみスキームの拡張ができることを見出した.この結果はある場の理論の低エネルギー有効理論には,無数の記述法があることを示唆する.この結果に基づいた論文がPTEP 2015 no.10 103B05に掲載された.格子上のグラディエントフローとくりこみ群の関係の研究は,大阪大学の鍵村亜矢氏と大阪大学の富谷昭夫氏(現 華中師範大学所属)と共同で,グラディエントフローに対する有効作用を定義し,数値計算によってその振る舞いを求めた.この研究に基づく論文を「Effective lattice action for the configurations smeared by the Wilson flow」というタイトルで2015年8月に発表した.さらに山村単独の研究により,数値計算に頼らない,微分方程式を用いた解析方法が発見された.この微分方程式の方法は従来のグラディエントフローの概念を拡張できる.得られた結果は,グラディエントフローがくりこみ群的な描像を含んでいることを示唆する.この研究に基づく論文を「The Yang-Mills gradient flow and lattice effective action」というタイトルで2015年10月に発表した.
2: おおむね順調に進展している
拡張された量子色力学については,本来の4次元の理論では無い2次元の簡単なモデルについて,解析を行ったが,くりこみ群を用いて低エネルギーのハドロン描像を確認するという目的が達成できた.また,4次元の理論については,符号問題について考察し,1つの解決策を発見したが,4次元では実際の数値計算での実用化は難しい事がわかった.そのため別の解決策を考案する必要がある.
拡張された量子色力学については,2次元で十分な解析が行えたので,4次元での解析も行っていく予定である.また,解析を行う上で必須となる,くりこみ群の方法そのものについても,最近の話題を取り入れながら,研究していく予定である.
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Progress of Theoretical and Experimental Physics (PTEP)
巻: 2015 no. 10 ページ: 103B05(20pages)
10.1093/ptep/ptv142