本研究課題においては、ヒトが視覚と聴覚の感覚間協応(直接的な関係のない二つの感覚属性の間に感じられる非恣意的な対応関係)を感じるメカニズムの解明を目的として、複数の研究を行った。まず、平成27年度から継続して行ってきたfMRIデータに基づくデコーディング研究については、これまでに得られた結果から最終的な解析および議論の方針を固め、学術論文の投稿に向けて準備を行った。 また、より現実的かつ複雑な刺激における感覚間協応の生起条件を探るため、文字と書体の協応を規定する要因について検討を行った。協応の規定因に関する複数の仮説に基づいて刺激を選出し、それらの刺激の間に客観的な協応が認められるか否かを心理物理実験によって確かめた。その結果、文字と書体のような複雑な刺激における感覚間協応は、多くの先行研究で用いられてきた単純な刺激における感覚間協応とは異なるメカニズムによって成立している可能性が示唆された。本研究結果については、国内の複数の学会、研究会にて発表を行なうとともに、学術論文の投稿に向けて準備を行った。 さらに、平成28年度5月から平成29年度4月にかけて米国カリフォルニア大学バークレイ校にて行った研究では、視覚の要約統計量知覚における局所情報の統合メカニズムについて検討を行った。その結果、時間、空間的な情報の要約統計量抽出において、特に顕著な情報が優先的に重み付けられて統合される可能性が示唆された。本研究については、国内学会、国際会議での発表を行うとともに、主な実験結果をまとめた学術誌が論文国際誌に受理された。
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