研究課題/領域番号 |
15J01139
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 春緒 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | ターラ / ウスール / インド音楽 / リズム理論 / ペルシャ音楽 / 数学的 / 韻律論 / リズム型 |
研究実績の概要 |
ヒンドゥスターニー音楽にはメロディーを規定するラーガとリズムを規定するターラという、2つの重要な音楽理論があるが、本研究ではこれまであまり研究対象になってこなかったターラに焦点をあてた。北インドにイスラームの影響が顕著になってきた13世紀以降にインドで書かたペルシャ語音楽書に書かれたリズムに関する記述から音楽用語を抜き出し語彙集を作成した。その上で同時期、あるいはそれより前の時代にかかれたペルシャ音楽に関する音楽書を読み、同様に語彙集を作成した。それらを比較することによって、インド音楽のターラがペルシャ音楽のリズム理論とどのような関係にあるのかを検証した。 インド音楽のターラに対するペルシャ語音楽の用語はウスールというリズム理論であるが、両者とも音節の組み合わせによって構成されているリズム型を持っている。インドの場合サンスクリット語音楽書に書かれているデーシー音楽(地方の音楽)から発展した120ほどのリズム型が存在する。一方、ペルシャ音楽のリズム型の種類は10程度と少量であった。 両者のリズム理論は多くの語彙と概念において共通性を持っていた。これらの事実からリズム型を基礎とするリズム理論には普遍性があることがわかった。ただし重要な相違点としてはペルシャのウスールが韻律論をベースにして発展しているのに対し、インドのターラは数学的にリズムを操作することで多くのヴァリエーションを作り出す点である。このようなターラの数学的リズム操作の手法はサンスクリット語音楽書にもすでに記載されていることから、かなり長い歴史を持つことがわかった。サンスクリット文化を色濃く残す南インドのリズム理論には特にそのような数学的要素が色濃く残されている。今後の課題としては北と南のターラを比較しペルシャ音楽のリズム理論がヒンドゥスターニー音楽にどのような影響を受けたのかを明らかにすることである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はおおむね順調に進展していると言える。その理由としては2点ある。まず必要とされていたペルシャ語音楽書の写本や刊本を滞りなく入手することができ、稲葉教授との週一回の会読によって、ペルシャ語音楽書の内容をある程度翻訳することができたことでデータが蓄積されたことである。そして、インドのカシミールにフィールドワークに行き、そこで演奏されているスーフィヤーナ・ムースィーキーを取材できたことで、ペルシャとインド音楽の融合過程を実際に見ることができたからである。 また、南アジア学会研究集会(7月25、26日)、南アジア学会全国大会(9月26日)において口頭発表を行い、本研究の課題や意義について研究者の諸先輩方から貴重なコメントをいただくことができた。 ただし、カシミールへのフィールドワークを優先させたことによって、当初の目的であったイランへのフィールドワークは持ち越された。今年度はその穴埋めをするため、8月頃にイランでの調査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究における重要な課題としては、これまで読んできたペルシャ語の内容から得られた知見を博士論文の形にまとめることである。もちろん実践研究は今後の重要な課題であるが実践における多様な事例をインド音楽におけるペルシャの影響という枠組みにで捉えるには長期的なフィールドワークの必要がある。それらのフィールドワークは今後、共同研究や博士課程を修了後に本格的に実施することとしたい。 もちろん本研究の初年度に計画していたイランへのフィールドワークは今年度行い、実践研究を少しでも進展させていく所存である。
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