研究課題/領域番号 |
15J01143
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
友永 奈美 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | スフィンゴ脂質 / セラミド / スフィンゴイド塩基 |
研究実績の概要 |
海産物由来スフィンゴ脂質であるセラミドアミノエチルホスホン酸(CAEP)の食品機能性の解明を目指し、簡便な定量法の確立および本手法を用いた消化管における分解の評価に取り組んだ。まず、光散乱検出器を備えた高速液体クロマトグラフィーを用いた既存のスフィンゴ脂質定量法を応用し、CAEPの簡便な定量法を確立した。次に、CAEPの消化特性を明らかにするために、マウス小腸粘膜ホモジネートによるCAEPの分解を構造類似物であるスフィンゴミエリンと比較した。その結果、CAEPおよびスフィンゴミエリンの減少に伴って、各分解産物であるセラミドおよびスフィンゴイド塩基が増加することを確認した。したがって、マウス小腸粘膜ホモジネートはCAEPをスフィンゴミエリンと同様に分解できることが示された。また、スフィンゴミエリンの分解酵素であるアルカリ性スフィンゴミエリナーゼの至適反応条件(pH 9.0)では、CAEPの分解速度は、スフィンゴミエリンとほぼ同様であったが、中性条件(pH 7.2)では、スフィンゴミエリンよりも速やかに分解されることを確認した。したがって、CAEPの分解にはアルカリ性スフィンゴミエリナーゼ以外の酵素も関与している可能性が考えられた。さらに、CAEPを経口投与したマウスの小腸内容物からCAEPに由来するスフィンゴイド塩基が検出されたことより、生体においても分解されることを確認した。ラットを用いたリンパ管カニューレ法によって、CAEPを摂取したとき生体へ吸収されるか否かを現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の予定は、海産物由来スフィンゴ脂質の定量法の確立と消化管吸収機構の解明であった。そこで、海産物由来スフィンゴ脂質のCAEPについて簡便な定量法を確立し、本手法を用いて小腸におけるCAEPの分解を評価した。その結果、マウス小腸粘膜によってセラミドおよびスフィンゴイド塩基へと分解されることを見出した。経口摂取されたスフィンゴ脂質はスフィンゴイド塩基へと分解され吸収されることが報告されている。そのため、スフィンゴイド塩基へと分解されるCAEPも吸収されることが予想される。したがって、当初の目的はほぼ達成されたと考えられる。また、スフィンゴイド塩基へと分解されたCAEPの吸収については、リンパ管カニューレ法を用いて現在検討している。
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今後の研究の推進方策 |
CAEPの食品機能性の評価を目指す。スフィンゴ脂質の経口摂取による皮膚バリア機能改善作用が期待されている。そこで、ヘアレスマウスにCAEPを経口摂取させることで、皮膚バリア機能に与える影響を評価する。さらに、皮膚バリア機能に関与する遺伝子の発現量や皮膚中のセラミド量を測定することで、より詳細な作用の解明を試みる。
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