研究課題/領域番号 |
15J01184
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中谷 和弘 神戸大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 農作業支援 / 無人走行車両(UGV) / アシストロボット / 非線形制御 / バイオメカニクス |
研究実績の概要 |
本研究は、深刻化する農作業従事者の高齢化や、新規就農者の問題に対する農作業支援に関するものであり、その具体的な課題として「無人走行車両による農作業の自律化による農作業支援」と「自動化が困難な作業に対して、農作業従事者の作業支援のためのアシストロボットの提案」を対象に取り組んできた。 「無人走行車両による農作業支援」については、具体的な農作業での課題に着目し、重量のある収穫物や肥料などの運搬を想定したトレータによる無人走行車両に機能を拡張し、さらに農地における取り回しの面から、トレーラの牽引後退での経路生成と後退制御を実現し、実用的な農作業支援プラットフォームの構築が完了した。 「作業支援のためのアシストロボットの」については、モータの数を最小限の2つとして、システムをシンプルにかつ軽量なものとした。そして、理想的な人の歩行形態であると言われている受動的動歩行の原理を用いて、それにカオス制御の一種である遅延フィードバック制御を用いることで、不整地に対応したアシスト制御手法を提案し、実際の農地にて実機実験を行うことでその有効性を確認することが出来た。 これらの二つの成果については現在その成果をまとめ論文誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、無人走行車両について、より多くの時間を充てる予定であったが、理論の提案からシミュレーションでの検証を経て、実機での実験までを非常に円滑に推進することが出来たため、農作業のの無人化、自律化の面での一定の成果を得た後の、無人化が困難なタスクについて、同時に検討する時間を確保することが出来た。 作業従事者のアシストは予定よりも多くの時間を使って作業が可能となったが、不整地おける実用的なアシストロボットの運用はほぼ前例のないもので、実際の農地において機能的であること自体が困難な課題であるが、実際の農地における実機実験、モーションキャプチャシステムなどによるアシスト性の評価などから一定の有効性を確認することが出来た。 しかし、今後どのように産業に、無人化の技術を導入していくかという議論に対して、無人化の研究と、無人化だけでなく作業者のアシストという相対する研究を両面から行っている研究者は非常に稀であるが、このような研究の手法をとることで、無人化、有人化のグッドバランスを見極めるこ出来ると考えており、ひいては真に実用的な農作業支援システムの提案が可能となると信じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は「無人化が困難な作業におけるアシスト」に研究の比重を置いて推進していく予定であるが、無人化の研究は近年の、コンピュータ産業、センサ技術の進展によって大きく加速し、現実のものになってきている。 一方、アシストに関する研究においては、アシストするための動力であるアクチュエータ、人の運動に対する理解などに関して、ブレイクスルーといわれるような技術の革新が起こっていない分野である。 アシストはロボットと人との相互作用がもっとも密で、激しい領域であるので、それら人・機械システムについて、制御工学的な側面と、バイオメカニクスの側面の両方を考慮した。人にとって本当に有効なアシストロボットを提案することを目標とする。そのため、人の基本的動作についてそれぞれの動作に対応したアシスト手法の考案、実験と評価を行い、科学的な有効性を明確にしながらも、人の使用感などの感性の部分も含めた評価をし、提案するアシストロボットの有効性を示したい。その成果から、共同研究先の、パナソニック社内ベンチャー、アクティブリンク株式会社での商品化を現実のものとし、作業支援システムとしての一つの提案が可能になると考えている。
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