本研究はサブテーマとして1.外洋性動物プラクトンの動態(S1)、2.沿岸性動物プランクトンの動態(S2)、3.経年変動の影響(S3)の3つを設けている。平成29年度は平成28年度に引き続き沿岸性動物プランクトンの動態として、休眠卵の実験を中心に行った。 ・紋別港オホーツクタワーにおける休眠卵の季節的動態の調査(S2) 沿岸性動物プランクトンの新規個体群の加入に大きな影響を与える海底泥中の休眠卵の季節的動態を解明する目的で、紋別港オホーツクタワーにおいて、エクマンバージ採泥器を用いた採泥と、海底泥中から動物プランクトンの休眠卵を抽出し、海底泥中の休眠卵密度の推定と現場環境を再現した休眠卵孵化実験を行った。実験の結果、冬季の結氷水温下でも海底泥中の休眠卵からの孵化が確認出来たことに加え、特に2月から3月にかけて、海底泥中の休眠卵密度の減少と休眠卵孵化率の増加が同じタイミングで観察された。このことから、動物プランクトン休眠卵はオホーツク海沿岸域のような季節海氷域において有効に機能しており、海氷の融解・後退に対応して休眠卵の孵化が起こっている可能性が示唆された。これらの実験で得られたデータをまとめ、プランクトン・ベントス合同大会と海洋生物学シンポジウムにて発表を行った。 ・紋別港オホーツクタワー長期動物プランクトン試料データの解析(S1とS3) 紋別港オホーツクタワーにおける1997年4月-2012年12月にかけての動物プランクトン試料に基づく種同定・計数データについて、解析を継続した。経年変動に注目すると、特に4-6月の動物プランクトン群集の出現・消失の変動が最も大きいということがわかった。また環境変動としては宗谷暖流の勢力が強くなる時期と相関があることから、海氷の勢力や春季植物プランクトンブルームとも相互関係があると予測されるが、これらは現在解析中である。
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