研究課題/領域番号 |
15J01241
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
細田 雅也 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 英語教育 / 英文読解 / EFL / SLA / 説明文読解 / テキストからの学習 / 文章理解 / 推論生成 |
研究実績の概要 |
■本研究の目的 ・英語学習者がテキスト内容を新しい知識として学習する (i.e., テキストからの学習) ためには,どのようなメカニズムを経るのかを明らかにすること。より具体的には,テキスト中の因果関係を一貫性をもって理解すること (i.e., 因果的一貫性の構築) と,テキスト情報と読み手の知識とが統合した理解を意味する「状況モデル (の構築)」との関わりを,読解中の処理,および読解後の理解を観点として解明することを目的としている。 ■本年度の研究成果の概要 ・日本人英語学習者を対象として2つの実験を行い,英語学習者が読解後に構築した因果的一貫性が,テキストからの学習成果を予測するか否かは,学習者の英文読解熟達度に依存することを明らかにした。 ・上記の結果に考察と得られた教育的示唆を加え,「全国英語教育学会」にて発表し,その内容を英語論文としてまとめたものが,査読付き全国誌「ARELE (Annual Review of English Language Education in Japan)の採択を得た。 ・また,上記の他に得られたデータは2016年度4月に応用言語学分野における最高峰「アメリカ応用言語学会 (AAAL)」にて発表することが確定しており,国際誌にも投稿済み,現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英語学習者が説明文読解後に構築した因果的一貫性と,テキストからの学習との関わりを検証する実験を2つ行い,その結果,今後の更なる検証に必要な示唆を得ることができ,その成果を査読付き学会誌にて発表することができたため。 具体的には,実験結果から,因果的一貫性と最終的なテキストからの学習成果は,学習者の英文読解熟達度に依存することが明らかになった。さらに,得られたデータをより詳しく分析すると,熟達度の低い学習者では,効果は決して大きくはなかったものの,テキストの明示情報に対する記憶の方が,因果的一貫性よりもテキスト学習と関わりが強い傾向がみられた。 この結果を全国英語教育学会で発表し,さらにその全国紀要ARELEに投稿,採択を得た。また,もう1つの実験結果は国際誌に投稿し,現在査読中である。 これらの結果は,因果的一貫性に関わる説明文読解中の処理に対する検証実験を立案する上で,英文読解熟達度や,テキストの明示情報に対する記憶を考慮する必要性を示した点において,本研究を発展させる基盤を築いたものといえる。ゆえに,研究はおおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
英語学習者の説明文読解中における因果関係の処理を検証する実験を計画している。(a) 説明文中の明示的/暗示的な因果関係に対し,英語学習者の読解処理がどの程度敏感であるか,(b) 因果的一貫性の構築には具体的にどのような読解処理が関わるのかを2つの大きな検証課題として設定している。 これを達するために,英語学習者の読解処理を,説明文の読解時間を測定するものと,思考発話法 (読んでいる最中に考えていることを全て口頭で報告させる手法) を用いるものの,2つの実験により検証するつもりである。前者の読解時間による実験について,2015年12月には予備実験を終え,2016年4月現在で44名の実験が終わっている。この結果は2016年度に国際学会にて発表することを予定している。後者の思考発話による実験について,2016年5月に予備実験を行い,6月から本実験を開始する。思考発話法は,発話された内容の採点と分析が非常に煩雑であるため,計画的に実験を終え,できるだけ早く分析の段階に移行することを目指す。この実験結果は,再来年度に国内学会にて発表するつもりである。
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