安価に合成可能な酸化グラフェン(GO)は、その機能性の多さから燃料電池、スーパーキャパシタへの応用が期待されている。本課題では、電池材料の中でも重要な位置を占める電解質への応用を目指し、平成27年度はGOから高プロトン伝導体および電子/プロトン混合伝導体の開発に成功している。平成29年度の主な研究として、1)合成手法が異なったGOのプロトン伝導度の比較、2)球状炭素材料を用いた高プロトン伝導体の開発を行った。 1)ではHummers法、Staudenmaier法、Brodie法で合成したGOの構造とプロトン伝導度を比較することで、構造とプロトン伝導度の関係を調べた。まずプロトン伝導度は、Hummers法>Staudenmaier法>Brodie法の順に大きくなることがわかった。構造分析により、酸素含有量がHummers法>Brodie法>Staudenmaier法の順で多くなる一方で、層間隔はHummers法>Staudenmaier法>Brodie法の順に大きくなることが確認された。このことからも、GOのプロトン伝導は層間隔が非常に重要であることが結論付けられた。 2)では、球状構造を有する、高い耐熱性とプロトン伝導性を有した炭素材料を作製することに成功した。この材料はスクロースを原料とした球状の炭素材料をHummers法により酸化したもので、直径約1.5 umの球状構造を持っていた。また、表面にカルボキシル基が存在するため、GOと同等の高いプロトン伝導度を示し、さらに200 ℃で熱処理後も高い伝導度を保持していた。これまでのプロトン伝導体の多くは100 ℃以上の温度下では伝導度が著しく低下するため、この材料が高い熱安定性を有していることがわかる。通常燃料電池は、100 ℃以上の温度で用いられることが多いことからも、本材料は燃料電池の固体電解質としての応用が期待できる。
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