研究課題
本研究は日本人英語学習者のテキスト読解を研究対象とし、詳細情報を要約してメインアイディアを理解する帰納的なプロセスや、メインアイディアの内容を個々の詳細情報の理解に適用していく演繹的なプロセスの検証を目的としている。初年度である27年度では、上記の帰納的・演繹的なプロセスによってメインアイディアの理解が読み手の心内で活性化されているかを検証した。まずその前提として、読解中にテキスト情報が持つ重要度の違いが区別されるかを調査した。テキスト全体を要約するメインアイディア、各パラグラフを要約するメインアイディア、その他の詳細情報から構成されるテキストの読解時間を分析した。その結果、重要な情報ほど読解時間は長く、学習者がより多くの注意を払っていたことが確認された。また、帰納的・演繹的なプロセスに相当するプライミング刺激を読解後に提示し、メインアイディアに対する学習者の反応が促進されるかが検証された。詳細情報、テキスト全体のメインアイディア、非明示情報(統制条件)を提示し、その後パラグラフのメインアイディアに対する再認課題が行われた。正反応率の分析から、学習者は主に演繹的なプロセスによってメインアイディアを理解したことが実証された。しかし、正反応時間の分析から、その理解は強く活性化されてはいなかった可能性が示唆された。これまで英語学習者の読解において、読解中におけるテキスト情報の重要度の区別や、2つのプロセスによるメインアイディア理解を同時に扱った研究は少ない。そのため、読解中における重要度の区別が確認されたことや、特に演繹的なプロセスによってメインアイディアが理解されたことには、重要な意義がある。今後は演繹的な読解中のプロセスをより厳密に検証する予定である。また、その際にテキストやタスクの観点から、メインアイディア理解を促進する方法を検討することが望ましいと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
当初は読解時間とプライミング効果を用い、1年目に演繹的なプロセス、2年目に帰納的なプロセスを検証する予定であったが、プライミング効果による帰納的・演繹的なプロセスの検証を1年目にまとめて実施した。読解時間による演繹的・帰納的なプロセスの検証は次年度にまとめて実施する予定である。本年度の研究結果は関連する学会や学会誌で発表されて一定の評価を得ていることから、概ね計画通りの進捗が得られたといえる。
2年目の研究では、演繹的なプロセスが実際の読解中に生じているかを、より厳密な手法を用いて検証する。具体的には読解時間や眼球運動を測定し、メインアイディアを理解する際に、学習者がどのような情報に注目しているのかを観察する。また、学習者の読解熟達度も要因として考慮する。
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Proceedings of the 48th annual meeting of the British Association for Applied Linguistics
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